SPECIAL TALK Vol.71

~とどまることは、衰退を意味する。尺八を武器に世界を目指したい~

2020年のニューリーダーたちに告ぐ

尺八の奏者は「男性が9割」といわれるが、若い女性の奏者たちも活躍の場を広げている。そのひとりが田辺しおり氏だ。

都山流尺八師範 田辺恵山として教室を主宰し、後進の育成に力を入れるかたわら、伝統楽器に携わる仲間たちとユニットを組み、ジャズやポップス、クラシック曲のカバーや、他ジャンルのミュージシャンとのコラボレーションも精力的に行う。

伝統芸能である邦楽の世界で活動しながらも、新しい挑戦を続ける田辺氏の生き方からは、未来が見えづらくなった今の時代を生き抜くためのヒントが見つかるはずだ。

田辺しおり氏 16歳より父・田辺頌山に手ほどきを受け尺八を始める。藤原道山に師事し、東京藝術大学院音楽研究科修了と同時に全国各地でステージ、レコーディング、指導活動、ラジオ出演等を行う。また、東京コレクションでの生演奏や演劇の劇中音楽をはじめ、古典を大切に継承しながらもポピュラー、JAZZ、現代音楽とジャンルにとらわれない活動を展開している。近年では海外での演奏も多く、中国、台湾、シンガポール、マレーシアなどアジアを中心に活躍の場を広げ、「尺八でみんなのhappyを生みたい!」をモットーに活動中。

金丸:本日は尺八奏者の田辺しおりさんをお招きしました。

田辺:お招きいただき光栄です。

金丸:今日は5月末に元麻布にオープンしたばかりの『對馬』でお話を伺います。中華料理をベースにする、日本の旬な食材を生かした創作料理が味わえます。店主いわく「都合のいいように使っていただける“なんでも屋”」だとか。

田辺:普段からもりもり食べるので、とても楽しみです(笑)。5月末ということは、コロナで大変だったのではないですか?

金丸:もともと開店後しばらくは完全予約制の1日1組でやっていくつもりだったそうで、利用しやすいという声が多いそうですよ。でも、田辺さんも演奏家として、今の状況は大変なのでは?

田辺:そうですね。私たちも人を集めての演奏ができない状況が続いています。2月の終わりくらいからキャンセルが出はじめて、3月から5月まで公演がゼロでした。

金丸:それはなかなか大変ですね。

田辺:この状況をどうしたらいいのかわからない、というのが正直な気持ちですが、ストリーミングでライブ配信をしたりと、これまでやったことのない試みに挑戦しているところです。

金丸:それは素晴らしい。私は大学時代に軽音楽部に所属していたので、音楽のことは少しは知っているつもりですが、邦楽となると、また全然違った世界なのでしょう。今日は田辺さんがなぜ尺八という楽器に興味を持ったのか、邦楽はこれからどうなっていくのか、いろいろとお話を伺います。どうぞよろしくお願いします。

尺八や箏の音に包まれた邦楽家系に生まれる

金丸:早速ですがお生まれはどちらでしょう?

田辺:東京生まれ東京育ちです。生まれは中央区ですが、その後すぐに引っ越して、江戸川区の下町で育ちました。古くから住んでいる人が多く、コミュニティがしっかりあって、人情味あふれる街です。東京とは思えないくらい緑もたくさんありますし。

金丸:田辺さんのご両親も、邦楽奏者だそうですね。

田辺:はい。父は2人兄弟で、両方とも尺八をやっていて、母のほうは箏をやっています。父と母は邦楽の学校で出会って結婚しました。

金丸:面白いですね!お父様はどんなきっかけで尺八を始められたのですか?

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