2020.07.21
SPECIAL TALK Vol.702020年のニューリーダーたちに告ぐ
国内でもあまり注目されてこなかった山梨固有のぶどう「甲州」。
しかし、2014年、「甲州」のワインが世界最大のワインコンクール「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード」で金賞を受賞する。日本初の栄誉を獲得したのは、約100年前に創業された中央葡萄酒株式会社だった。
栽培醸造責任者を務める三澤彩奈氏は、世界各地でぶどうの栽培とワインの醸造技術を学びながら、地元産の「甲州」にこだわってワイン造りを続けている。
ワイナリーの長女に生まれたとはいえ、なぜそこまでワイン造りに情熱を注げるのか。挑戦の連続だった三澤氏の歩みを振り返りながら、新時代に求められる価値を探る。
金丸:本日はワイン醸造家の三澤彩奈さんをお招きしました。
三澤:お招きいただき光栄です。
金丸:今日の対談の舞台は神楽坂の『懐石 小室』です。四季に恵まれた日本の食材を存分に生かすという哲学から、日本酒だけでなくワインも日本産を軸にされています。
三澤:弊社のワインも取り扱っていただいているので、お料理と合わせていただくのがとても楽しみです。
金丸:三澤さんは山梨県で古くから続く、中央葡萄酒の家系にお生まれですよね。
三澤:ワイナリーは1923年の創業で、父が4代目になります。
金丸:女性の醸造家が世界でもまだ珍しいなか、2014年には世界最大のワインコンクール「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード」で日本初の金賞を受賞するなど、三澤さんは日本ワインのレベル向上に大きく貢献されています。お父様もまだ現役でいらっしゃるとか。
三澤:私はぶどうの栽培と醸造の責任者をしており、72歳になる父が社長を務めています。今は父の魂を受け継いでいるところかな、と思っています。
金丸:数年前に知人から「日本のワインなんだけど、ちょっと飲んでみて」と紹介されたのが、中央葡萄酒のワインでした。それまで「日本ワインは地味なもの」という先入観があったのですが、ファーストアタックというか、香りがすっとしていて、しかも日本に昔からあるぶどうを使っているというので、なおさら驚きました。
三澤:私たちは「甲州」という山梨固有の白ぶどう品種にこだわっていますが、どうも昔はイメージがあまり良くなかったようで。
金丸:それをいい意味で裏切られました。私は鹿児島生まれで、私の周りは焼酎しか知らないような人ばかりだったので、三澤さんのようにワイン造りの家系に生まれた人生が想像もつきません(笑)。日本のワインを背負って立つ三澤さんが、これまでどのような挑戦をしてきたのか、そして日本のワインのこれからについてじっくりお話を伺いますので、どうぞよろしくお願いします。
約100年続くワイナリー祖父も父も異業種から転職
金丸:早速ですが、お生まれはどちらでしょう?
三澤:生まれも育ちも山梨県の勝沼です。
金丸:これまでお話ししていると、かなりカチッとしている印象ですが、やはり真面目なタイプですか?
三澤:根っから真面目と言われますね(笑)。取り柄といえば、子どもの頃から植物を枯らしたことがないことでしょうか。
金丸:毎日世話を欠かさず、お水をあげていたんですね。素晴らしいじゃないですか。ごきょうだいは?
三澤:弟がいて、北海道でワインを造っています。
金丸:ワイン一家ですね。
三澤:千歳ワイナリーというところです。年1万5,000本ほどの、規模としては小さいところですけど。
金丸:ところで、初代がワイナリーを開いたのが1923年ということですが、何がきっかけで創業されたのですか?
三澤:もともとは百貨店のような商いをしていたそうですが、勝沼にはぶどうがあるから、せっかくならそれでワインを造ろう、というのがスタートだったようです。ただ、ワイナリーとして専業になったのは3代目の祖父からです。祖父は家業を継ぐ前は、神戸で銀行に勤めていました。
金丸:手堅い銀行から醸造家への転職、よく決意されましたね。
三澤:祖父は少し体が弱かったというのもあって、地元に戻りワイナリーの会社を設立したと聞いています。私の父も実は商社で10年間働いたのち、ワインそのものへの興味だけでなく、農村共同体についての問題意識があって山梨に戻ったそうです。
金丸:面白いですね。思いや考えには違いがあるでしょうが、2代続けて安定した職からワイン醸造の世界に。家族経営のワイナリーだからこそ、その歴史の面白さは大きなメーカーとは一味違います。
三澤:祖父や父が堅い職業を辞めて山梨の実家に戻り、ワイン造りを継いだということに、私自身もなんとなくロマンを感じていました。それがこの世界に入るひとつの動機です。
【SPECIAL TALK】の記事一覧
2024.02.21
Vol.113
~学問という知的な武器を子どもたちに。学びの体験をアップデートして日本を変える~
2024.01.19
Vol.112
~庭師として素晴らしい日本文化を守り、次の世代へと伝えていきたい~
2023.12.21
Vol.111
~いつだって新しい人に出会いたい。シンプルな好奇心が新たな交流を生んだ~
2023.11.21
Vol.110
~自分が飲みたい日本酒で世界に挑戦し、日本酒業界に革命を起こしたい~
2023.10.20
Vol.109
~世界で一番愛される字を書きたい。世界を舞台に活躍する書道家へ~
2023.09.21
Vol.108
~ピアノや音楽をもっと自由に、多くの人が慣習にとらわれず楽しんでほしい~
2023.08.21
Vol.107
~未曽有の事態に直面して生まれた医療の新しいカタチ~
2023.07.21
Vol.106
~日本における医療の弱みはウェルビーイングの浸透で改善できる~
2023.06.21
Vol.105
~現役復帰した今だからできることがある元オリンピアンとして伝えたいスポーツの力~
2023.05.19
Vol.104
~病気に苦しむ人だけではなく、日本の医療界を救う医者になりたい~
おすすめ記事
2020.06.19
SPECIAL TALK Vol.69
~「やりたいことを、まずはやる」真っ直ぐな熱量があったから今がある~
2023.10.11
ハラスメント探偵~通報編~
“頭をポンポン”しながら「頑張れよ」という上司に鳥肌!ハラスメント相談窓口に駆け込むも…
2023.04.08
後輩を誘って、恵比寿でランチ会ならここへ!「センスいい」と喜ばれる人気店4選
2023.06.03
「銀座で食事会」なら、思いっきりゴージャスに!個室でゆったり寛げるレストラン4選
2016.07.20
有名企業の役員も御用達! 接待を成功に導くレストラン5選
2015.05.22
千寿に萬寿!レアな久保田を飲み比べできる 直営店が銀座にオープン!
2023.08.30
ハラスメント探偵~解決編~
オフィスに家族写真を飾っていたら“セクハラだ”と内部通報された男性社員。会社側のジャッジはいかに!?
2023.09.27
ハラスメント探偵~解決編~
「性的な噂」を飲みの席で話したことがセクハラ問題に発展!果たして、結末は?
2023.08.02
ハラスメント探偵~通報編~
「私の企画書のほうが良くないですか?」指示に従わない新人に、困り果てたOJT担当女性がとった行動
2015.01.22
絶対に負けられない接待が、今宵はある
受注後の社長会食。『旬房』の個室で堅い握手
東京カレンダーショッピング
ロングヒット記事
2024.03.17
男と女の答えあわせ【A】
彼の家に初めてお泊まりした28歳女。洗面台の裏戸棚で見つけてしまった、ヤバいものとは
2024.03.12
Editor's Choice~fashion~
最強の一粒万倍日で運気UP!ルイ・ヴィトンやディオール、グッチなど、おすすめの新作財布6選
2024.03.11
「髪型が決まらないと出社したくない!」そんなお洒落男子に欠かせない3種の神器が登場
2024.03.14
Editor's Choice~beauty & wellness~
春トレンドのツヤ肌が叶う、新作ベースメイクアイテム3選!塗るだけで“生まれつき美肌風”な仕上がりに
2024.03.15
大人の週末ToDoリスト
虎ノ門ヒルズのワインフェスや都内各所で開催のファッションショー…今週末行きたいイベント3選