コンパス〜28歳、人生の羅針盤〜 Vol.2

「まだ若いのにもったいない…」23歳で結婚し、地方で暮らす妻。果たして正解だったのか?

それは今から約4年前の冬。忘れもしない1月のある日のこと。

すみれは就活で難関企業といわれる大手化粧品メーカーに総合職として入社し、もうすぐ1年が経とうとしていた。

「俺、4月から新潟に転勤になった。短くても2年は新潟だと思う」

学生時代から付き合っている彼氏・隼人が、神妙な表情でそう告げた。

「すみれも憧れの会社でようやく仕事に慣れ始めた頃だと思うし、しばらく遠距離になるのかな」

ー地方転勤。短くて2年、かあ。

隼人が金融系の会社で働くと決まった時から、若手のうちに数年の地方転勤があるとは聞いていた。

そして周りをみていれば、「遠距離恋愛」が長引けば長引くほどうまくいかずに、結局は別れに繋がることが多いのもわかっている。

しばらく考えた末に、すみれは口を開いた。

「隼人がよければ、私は一緒に新潟にいくわ」

気まずそうに俯いていた隼人が、驚いたように顔を上げる。

「…え?でも、すみれは実家もこっちだし、今までずっと東京で暮らしてきたのに…?それに仕事は…?」

隼人が疑問を抱くのも無理はない。

確かにすみれは、生まれてこのかた東京から出たことがないし、実家で両親に守られるようにして過ごしてきた。それに今の会社での仕事も、以前から憧れていて、なんとか勝ち取ったものなのだ。

ー本当に、後悔しない?

なにが正しい選択なのか、すみれは自身にもう一度問いかける。でもやはり、答えは変わらなかった。

「大丈夫よ、隼人についていく。仕事はやめるわ」





それからの数ヶ月は、大忙しだった。

まずは家族に報告し、会社へも退職の意志を伝え引き継ぎを始め、周囲の友人たちにも報告。

4月には新潟に引っ越し、新生活がひと段落した5月に入籍した。

社会に出たばかり、23歳のすみれの結婚。それに伴う退職と、新潟への移住。周囲でもまだ結婚をした同級生はほぼいなかった。

退職が決まってからというもの、友人や会社の同僚に報告するたびに「せっかくいい大学を出て、仕事もこれからなのに勿体ない」と何度も言われた。

例にもれず、女友達・愛莉も「しばらく遠距離して、それからでもいいじゃない」と、すみれに言った。

ーでも私にとってはこれが、正解なの。

「私、もう決めたの。だって喜んでほしいから」
「喜んで欲しいって、誰に…?」

すみれは決して揺るがなかった。

この記事へのコメント

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No Name
こんな親いまどきいる?
自分の周りだと、親が会社役員とか社会的に立場が高い人ほど、これからのサラリーマンの厳しさ、日本の経済の厳しさを分かってるから、旦那頼みじゃなく女の子でもしっかり稼いで自立できるように促してるかんじするよ。
2020/07/17 05:1499+返信6件
No Name
もう完全に親のコントロール下に置かれてるね...親に反抗しまくり&好き放題しながら人生を送ってきた自分はまっぴらゴメン、こんなの。
2020/07/17 05:4075返信4件
No Name
正しいか間違ってるか、うちらが判断することではないな。
2020/07/17 05:2459返信6件
No Name
マインドコントロールされてるよね、親に。
彼女は自分の意思が無いのかな。
一生このままで自分の子どもにも同じことを言うの?
2020/07/17 05:2430返信6件
No Name
親の好みが羅針盤になってることはあると思うけど。
歯向かうだけ無駄とか、失望させたら怖いことされるとか、そういう支配の元って不健全すぎ。
洗脳なんだろうなぁ。
2020/07/17 06:1725
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