2020.06.01
彼女のウラ世界 Vol.1かいがいしく尽くす恋人
彼女の名前は近藤明子。今年30歳になる明子は、敏郎の6つ年下だ。
仕事は旅行会社のパート社員だが、3年前に大学時代の先輩に連れて行かれた食事会で知り合った頃は無職だった。そんな明子は、不規則な僕の余暇を埋めるためにはピッタリの相手だったのだ。
ルックスは、一般人から見たら美人の部類に入るかもしれない、といったところ。
しかし華やかな業界で働く身としては、彼女くらいがちょうど良く思えて、付き合うことを決めた。
「敏郎さん!今日はパッタイを作ってみたんだけど…。味、どうかな?」
明るすぎないブラウンのロングヘアを束ねた明子は、料理や家事をカンペキすぎるくらいにこなしてくれた。
その隙の無さはおそらく結婚を意識してのことだろう。
よくわからない異国の料理を作るなど、あざといというか、がんばりすぎなところに少々うんざりすることもあったが、生活には便利だし、何より美味しい。
ーまあ明子だったら、結婚してもいいかな。
交際開始してまもなく一緒に住むようになり、完全に胃袋をつかまれた敏郎は、自然とそう思うようになっていた。
そして力を入れていた企画がひと段落ついた3日前の晩、少々待たせてしまったが、満を持して指輪を渡したのだ。
それなのに。
敏郎は手紙を握りしめ、呆然と立ちすくむ。悲しみや怒りよりも、疑問符が頭の中を支配している。
そうして煩悶の末、ひとつの結論に達した。
―彼女は、僕を試しているんだろう。
それしかありえない。明子からの想いは十分感じていたし、明子にとっても自分は不足ない相手だと思う。
ただ、不規則な激務で何よりも仕事を優先する人間性ゆえに、明子から見たら多少の不満はあるだろう。
おそらく、これから結婚するにあたって、優先順位をはっきりさせておくための明子の反抗であり、作戦なのだ。
―プロをなめるな。僕はキー局の制作に携わるテレビマンだ。
AD時代はバラエティのドッキリ番組にも絡んだことがある。目には目を、歯には歯を。ドッキリにはドッキリを。
ほくそ笑みながら、敏郎も対抗してだんまりを決め込むことにした。幸いここ1週間、地方のロケが続いているので余計なことを考える暇はない。
しかしさすがにかわいそうかなと情が湧き、LINEで「どうしたの?」と、心配しているそぶりを見せようかとも思った。が、やめておくことにした。
これは結婚前のヒエラルキーを決めるための大きな一戦なのだから。
こんな情緒も謙虚さもない男性が、今後いったい彼女の何を知るのか興味はあるけど、とりあえず私はこういう人イヤだな!
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