伸也とは、大学のフットサルサークルの同期で、赤坂見附のレストランで開催された新歓コンパで隣の席になった時に意気投合し付き合い始めた。
情熱的でエネルギッシュな彼は、サークル活動はそこそこに、自ら作った人脈を駆使して資金を集め、大学2年の時には小さいながらもIT関連の会社を立ち上げていた。
「俺の夢は、今始めた会社を大きくして、いつか上場させることなんだ」
あの頃は、伸也の夢を純粋に応援していたし、いつかは彼と結婚すると信じて疑わなかった。
しかし大学卒業後、サユリが会社員として働くようになると2人の歯車は狂っていく。
監査法人の秘書職に採用され、社会人生活を謳歌する楽しさを覚えたサユリと、地盤が不安定なままがむしゃらに突っ走る伸也。
年上で財力もある大人の男性の蜜の味を知ったサユリが、同い年で経済力もままならない伸也の存在を物足りなく感じるのに時間はかからなかったのだ。
社会人1年目の冬、お食事会で出会った年上の商社マンと付き合ったことをきっかけに伸也とは別れた…。
それ以来、会ってない。
ー伸也、ずっと頑張ってるんだね…。
インタビュー記事を読んでいたら、無性に伸也に会いたくなってしまい、逡巡して迷った挙句に思い切って連絡してみた。
サユリ:お久しぶりです。インタビュー記事みたよ。おめでとう!!
Shinya:ほんと久しぶり。見てくれたんだ、ありがと。
サユリが連絡をすると、意外にも伸也からすぐ返事が届き、何度かやりとりをした後、土曜の夜にビデオ通話をすることになったのだ。
◆
当日、約束の時間が迫り、サユリは鏡の前でソワソワしていた。
ーていうか、オンライン飲みってどんな服装で臨むのが正解なの?
家にいるのに気合入れすぎも変だし、だらしなく見えるのも嫌。散々迷った挙げ句、デコルテがキレイに見えるワンピースを選んだ。
服装はナチュラル系だけどメイクはバッチリ。
顔がきれいに見えるようにライトをセッティングして、背景も考えてiPadをセットする。
ーよし、これで準備OK!
20時ぴったりに伸也から届いたURLを緊張しながらクリックする。
この記事へのコメント
音楽ってすごいなって思う。
今までは2019年の……ばかりだった