14日間の恋人 Vol.5

エスカレートする男の要求に、耐えられなくなって…。女が明かす、愛した男との過去

ひとり旅をするとき、こんな妄想をしたことはないだろうか。

―列車で、飛行機で、もし隣の席にイケメンor美女が座ったら…?

そして、妄想は稀に現実になる。

いくつになっても忘れないでほしい。運命の相手とは、思わぬところで出会ってしまうものなのだと。

傷心旅行に発った及川静香は、素性の知らない男と恋に落ちるが…。出会いから、別れまで、たった14日間の恋の物語。

◆これまでのあらすじ

静香は元カレに別れを告げられ、二人で行く予定だったハワイへ一人旅に来る

出会ってすぐに男女の仲になった勇作に運命を感じるが、彼は静香と心の距離を取っていた…。


Day5, 2019年6月12日


14時50分、ハイウェイ、ルートH1。クイーン・リリウオカラニ・フリーウェイ。

勇作が運転するジープのラングラーは、時速50マイルで、オアフ島を西へ進んでいる。

すでにホノルル空港の近辺は通り過ぎた。

「どこに向かってるの?」

助手席の静香は、車窓を眺めながら勇作に尋ねる。

窓の外では、大きな車体の数々が、左右のレーンを猛スピードで次々に追い抜いていく。

「今日は“西の果て”に行きます。昨日はオアフ島の東部のベタな観光スポットを周ったけど、今日は観光客が少ないエリアに行くから」

「“西の果て”っていう土地の名前なの?」

「いや、俺だけが言ってる名前」

「前に言ってた“裏ワイ”みたいな?」

「そうそう!」

大きく頷いた勇作は、いつものようにクシャッと笑う。

ホノルル行きの機内で出会って以来、なんだかんだで毎日顔を合わせているが、彼はいつもこんな感じでマイペースだ。そして自分流のルールがあり、自分の言葉を持っている。

ハワイ初日や2日目はお酒を浴びるように飲んでいたのに、ガイドとして車を運転していた昨日は一滴たりとも飲まなかった。

日本よりも基準が緩いこともあり、少しぐらいなら…と言って飲むタイプだと思っていたので、意外に真面目なのだと感心した。

静香がそのことを伝えると、勇作は「こっちだと飲んじゃう人も多いけど、他人は他人。自分は自分」と言って笑った。

何がおかしいのか分からないけど、つられて静香も笑ってしまった。

アルコールが入っていない昨夜の勇作は「やっぱ静香と一緒にいると楽しいわ。運命だって言い出す気持ちがわかるよ」と言ってはくれたものの、それ以上のロマンチックなムードは訪れなかった。

そのことが残念だから、静香は二日連続で彼にガイドを頼んでしまったのかもしれない。

とにかく毎日、勇作と一緒にいたかった。

「“西の果て”までロングドライブになるけど、何か俺に聞きたいことある?」

不意に勇作が言った。

んー、と首をかしげながら静香は考えるフリをする。

聞きたいことなら山ほどある。昨日、かなり親し気に電話で話していたアンジェラやクリスティーナといった女性たちとのことを筆頭に…。

何から聞こうか迷っていると、勇作が先に発言した。

「特にないなら、俺が静香に聞いていい?」

「えっ、いいけど」

「本当は一緒にハワイに来る予定だった、元カレについて教えてよ」

「元カレのこと?」

「ベロベロに酔っ払ったときに話してくれたけど、もう一度、お酒が入ってない状態で聞きたい」

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