「なんだかんだ週一くらいでご飯に行ってる。あと、たまに週末映画とかドライブにも行く」
「なにそれ、羨ましすぎる!」
相変わらず憧れの先輩に興奮する女子高生のように、美波は目を輝かせ声をあげる。
「でも、別に変な関係にはなってないよ」
興奮をたしなめようとする悠美に、美波はつまらなさそうに口を尖らせながら、ふーんと鼻から抜けるように声を出す。
「幸人くん、そういうの怒らないの?」
「幸人には言ってない。聞かれもしないし、まぁいいかなぁって」
「なるほどねぇ。まだ幸人くんのこと、好きなことは好きなの?」
美波の質問を悠美は頭の中で繰り返しながら、その答えを見つけ出そうとした。
思い返せば最近幸人と出かけても、手を繋がないように自分のポケットに突っ込んだり、家に泊まりに行く頻度も2~3週間に1回程度になっている。
幸人のことは嫌いじゃない。けれど...
うーんと唸りながら考えを巡らせていたが、ゆっくり口を開くと、言葉を選ぶように悠美は話し始めた。
「好きなんだけど、赤城さんと比べると雄を感じないというか。幸人って寝癖とか直さないまま出かけちゃうし、だらしなくてぼーっとしてるんだよね。とはいえ赤城さんってどこか危険な香りがするのよ」
「例えば?」
「本音を絶対に見せないんだよね。デート誘ってきたり、夜も電話とかしてきて積極的なのに、彼女いるの?とかどんな人が好き?って聞いても、どうだろうねってかわされちゃう」
悠美の話を聞いているうちに、美波の表情から段々と笑顔がなくなった。
「きっと悠美は一回冷静になった方がいいかもね」
えっ、と思わず悠美が言葉を漏らすと、美波はまっすぐ悠美を見つめながら話し続ける。
「例えると、今って2つのバッグを迷ってる感じだと思うのよね。1個はずっと使い慣れてる型、もう1つは気になるブランドのバッグだけど、使い心地は全くわからない。きっと、このままだと悠美はどっちを選んでも後悔すると思うんだよね」
「どうして?」
「どっちにも欠点が見えてしまってるから、片方が悪く見えるともう片方がよく見えるし、逆も然り、なのよ。悠美は完璧主義だから、どっちを選んでも満足できないと思う」
いつになく冷静な分析をする美波の話に、思わず「なるほど」と呟くと、悠美はパフェを食べるスプーンを止めた。
「異性として意識できる人か、男らしさはないけど安心を与えてくれる人か、悠美はどっちが良いんだろうね」
うーん、と相変わらず即答の出来ない悠美を見ながら美波はニコッと笑いかける。
「きっと今はさ、久しぶりの感覚に目が眩んでるんだよね。だから、3ヶ月だけ、彼らだけじゃなくてもっと他の男性を見るのはどう?そしたら、本当に大事なものが見えてきそうじゃない?」
美波の言葉で、悠美は少し目が覚めたような気がした。きっと、本当は6年ぶりにときめきを与えてくれた赤城に、今は気持ちが浮ついているだけなのだ。だからこそ、美波の言う通り、一度自由に考えるのはアリなのかもしれない。
悠美は、小さく頷くと、また一口パフェを口に運び、その甘さを味わうように目を閉じた。
ーこの恋は、やめどきなのか。それとも…?
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嘘は、許されるべきなのか。彼がついたホワイトデーの嘘に、彼女は。
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この記事へのコメント
やめておこうか。
もう飽きたよ。
それにしても「前のめり」になる人が登場する率が高い。頬張る人は減ったけれど笑