「新しい部署はどう?」
月曜日のランチ、新たなゴシップネタを期待しているかのように、目を大きく開きながら前のめりになって美波が話しかけてきた。
「まだわからないけど、第一印象はいい感じ」
「へぇ〜で、噂の赤城さんは?」
悠美の新しい上司である、赤城智。31歳にしてリーダーに任命された赤城の新チームに、悠美は異動になった。
悠美の異動を知った時に美波が大喜びした理由は、赤城が社内で誰もが知るイケメンだからだった。美波が何よりも聞きたいのは赤城のことだろうと思いながら、ため息混じりに悠美は答える。
「まぁ、噂通りのイケメンで物腰柔らかいオトナの男って感じ」
「へぇ〜やっぱ、弊社トップ3に入ると言われるイケメンは違うね」
憧れの先輩に恋をする女子高生さながら、美波は目を輝かせる。
「そういえば、また同期LINEで結婚報告飛んできてたね。27歳、駆け込み始まった感じするなぁ」
呆れてこれ以上赤城の話をする気にもなれなかった悠美は、すかさず美波の大好物である「結婚ネタ」に話をすり替えた。
「それこそ、悠美は?幸人くんと結婚しないの?」
「うーん、どうなんだろう。6年間なんの不満もないけど、じゃあ結婚しようともなってない」
「6年!」
口を大きく開けて見つめてくる美波を気にも留めず、悠美は淡々と話を続ける。
「一緒にいて楽だけど、恋人っていうより、もはや長年連れ添った相棒っぽいんだよね」
「でも結婚したら今後数十年一緒にいるわけだし、その方が楽じゃない?家の中でも四六時中女の子でいなきゃいけないの、疲れちゃいそうじゃん」
「まぁねぇ。でも、デートする時に、ドキドキとか全くしなくてさ」
「なにそれ大問題!女が枯れるよ!」
それまで同調していたはずが、急に声色を変えた美波に悠美が圧倒されていると、畳み掛けるように美波は続ける。
「よし、イケメン赤城さんにご飯ご馳走してもらって、キュンキュンしよう!」
そうして、美波による赤城語りはランチが終わるまで続いたのだった。
この記事へのコメント
やめておこうか。
もう飽きたよ。
それにしても「前のめり」になる人が登場する率が高い。頬張る人は減ったけれど笑