深夜0時の分岐点 Vol.5

「好きだけど、結婚願望はない」。アラサー女を迷わせた、年下彼氏の言葉

午前0時。
シンデレラの魔法が解け、現実に戻るように…

27歳。
学歴良し、勤め先良しの男女が送る夢のような日々は、27歳で現実を迎える。

若さと勢いで乗り越えられてきたものが、なんだか小難しくなってくる。

キャリアアップはどこまで目指すのか。結婚はするのか。子供は持つのか。

様々な選択肢が押し寄せてくる頃。

魔法が解けた時、彼・彼女は一体どんな選択をするのだろうか。

前回は、拗らせ男子に突きつけられた周囲の本音と彼の苦悩を紹介した。今回は…?


午前0時。

ソファに座っている海斗の腕の中で、遥香はスマホの画面に映る笑顔の二人を眺めていた。

このゆったりとした幸せな時間が、ずっと続くと思っていた。

スマホには、先週の3連休に行った京都・大阪旅行の帰りの新幹線で撮った写真が写し出されている。

新幹線の座席の隙間から興味深そうに目をパチクリとさせていた4歳くらいの男の子。思わず笑い転げた海斗と遥香は、しばし少年とじゃれ合うと、最後に記念写真を撮ったのだった。

「あ〜本当に可愛かったね、この子」

「ね!本当にキュンとした...子供欲しいなぁ〜」

自然に放たれた海斗の言葉を、遥香は聞き逃さなかった。今ならきっと、あの話ができるはず...。そう思った遥香は高まる気分に任せて、勢いよく海斗に抱きついた。

「ねぇ、そろそろ将来のこと考えてみない?」

二人揃って総合商社勤務の帰国子女。きっと、絵に描いたような夫婦になるはず。そんな期待で浮かれる遥香とは反対に、海斗の表情は一瞬にして曇った。

抱きつく遥香を押しやると、海斗は机の上のスマホに手を伸ばしながら、語気を強める。

「悪いんだけど俺、結婚する気ないんだよね」

「え、でも子供欲しいんでしょ?」

まるで能面のような海斗の表情に恐怖心を抱いた遥香は、伺いを立てるように聞くが、海斗はスマホから顔を上げずに返事をする。

「欲しいけど、あと2年は結婚するつもりない。そんな先のことを考えても、仕方ないし」

そう言い放つと、海斗は遥香に背を向け、スマホの音量をわざとらしく上げ、遥香を拒絶するようにゲームを始めた。

あの日以来、二人の間で「結婚」は決して口にしてはいけない言葉になった。

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