妻のベール Vol.1

妻のベール:控えめだった妻が別人のように…。経営者夫を支える地味な女が、本性を露わにした夜

結婚相手に経済的安定を求める女性は、多いと聞く。

結婚相手の職業人気ランキングを見ても、その通りと言えるだろう。

しかし中には、夢追う夫を信じ、支える“献身的な妻”というものもいる。

IT社長として成功した柳川 貴也(やながわ たかや)の妻・美香もそうだ。

一緒に貧しい時代を乗り越え、今でも夫の一番の理解者。彼女の支えがあったから成功出来たと言っても、過言ではない。

しかし、夫の思いとは裏腹に、財を手にした妻は豹変していく。欲望のままに。


「今日もおいしそうだな」

ランニングを終えた貴也がシャワーを浴びて部屋に戻ると、テーブルに朝食が準備されていた。

焼き鮭にほうれん草の胡麻和え、きんぴらごぼうに卵焼き。

妻の美香は、素朴だが温かい、そんな朝食を毎日作ってくれるのだ。

「美香が作る朝食は、世界一のパワーモーニングだな」

「貴也ったら、大げさなんだから。簡単な作り置きばかりよ」

照れ臭そうに笑う美香を、そっと見つめる。

−いや、本当に君は、素晴らしい女性だよ。

恥ずかしくて口には出来なかったが、心の中でそう呟いた。

「ほら、早く食べて。遅刻するわよ」

美香に急かされた貴也は、慌てて朝食を食べ始め、今日の予定をざっと報告しておく。

「今日は、クライアントと会食があるから遅くなる」

すると美香は、「OK」と指で輪っかを作って笑顔で答えた。

「それじゃ。いってきます」

貴也は、キーケースに大事に付けている、妻の手作りのお守りを握りしめた。

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