2019.12.07
【大ヒット御礼】煮沸 第二章 Vol.4【第二章 これまでのあらすじ】
多重人格の連続殺人犯として収監された橋上恵一。
心身喪失での減刑が予想される中、現場捜査官の工藤は、昔の回復期にあった ”まともな頃の恵一の犯罪” を追いかけ、殺人の痕跡を発見。
しかし、工藤が恵一にそれを詰問すると、「当時から多重人格の症状は治っておらず、保護者である叔父・和明がその人格を操り、犯罪に加担させていた」という独白を受ける。
…つまり、まともな精神状態ではなかったと。
一方、絶対に極刑に持ち込みたい警察上層部の黒岩は、精神鑑定医の井口に『恵一に刑事責任能力あり』の鑑定を出すよう脅迫。井口も応えてしまう。
捜査を進める工藤を尻目に、恵一の極刑包囲網は、確実に狭まっていくが…
◆国道
ーキキィッ!
車が停まり、一瞬の静寂の後にドアが開く。
車から降りてきた男の低い声が響く。
「恵一!」
恵一が元来た方向に振り返り、走ろうとする。
和明が優しく恵一の背中に問いかける。
「なぁ、こんな夜中にどこに行くんだよ?真奈美と一緒にいたんだろ?真奈美が見つからないと、おじさん困っちゃうんだよ」
背後から、和明の足音が近づく。
恵一の目に再び涙が浮かぶ。
電灯が、蛾と和明の笑顔を照らしている。
「…どうして」
恵一の声が震える。
「どうしておばさんを殺したんだよ!あんなに優しかったのに!」
「…何言ってるんだよ?殺したのは恵一だろ?おじさん…ショックだよ」
恵一が和明の方に振り向く。
「お前が僕を使ってやったんじゃないか!」
「…恵一。可哀そうに、動転して。さ、一緒に警察に行って、おばさんのところに案内しなさい。それで、ちゃんと罪を償…」
「どうしてやった!どうして!」
「…しつこいなぁ」
「どうして!」
和明から笑顔が消える。
「なぁ恵一。いいかい?大人の世界にはね、子供にはわからない色んな”仕組み”があるんだよ」
「なにさ、仕組みって!」
「…人ってね、予想外に死んじゃうと、お金が入ってくるんだ。”残された家族が困りませんように”って」
「…お金?」
.
「…見つからないよ」
「ん?」
「絶対に見つからない方法でおばさんを埋めた」
「なんで見つからないってわかる?」
恵一が和明に近づいて言う。
「…昔、お母さんが僕に教えてくれた。よく覚えてる」
「お母さんが何を埋めたんだ?」
「…僕だ」
和明の顔が歪む。
「…”ウチゲバ”って言うんだ。まだ見つかってない人もたくさんいるってお母さん言ってた。いいのか?僕を殺したら絶対におばさんは見つからないぞ」
「だったらお前が案内しろ!」
和明が憎悪に満ちた目で恵一に掴みかかる。
ーバッ!
「殺すぞ」
恵一が背中から園芸用のナイフを取り出す。
「…クソガキが、ふざけやがって」
恵一が構える。
「僕を殺せば、おばさんは見つからない。お前になんの得もないただの殺人だ。でも僕を生かしておけば、絶対にお前を殺してやる。…どうする?」.....
やはり和明は保険金目当、恵一は見抜いていた。そして工藤と真奈美の繋がり、お兄ちゃんと妹のやり取りの場面は一瞬???だったけど、工藤の最後の言葉。
黒岩の策略、井口先生は嵌められたのね…警察腐ってる…
もう怒涛の展開に目が覚めた。本当に痺れます!!!
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