結婚3年目の危機 Vol.10

「奥さんに不満はありません」結婚3年目、妻の誘いを断った夫の本音

「彼女に対して不満はない。これは本当です。ただこの1年、僕自身は少しばかり不調というか下降気味というか…。異動で上司が変わったんですが、その人とまったく合わなくて」

妻のことを語っていた時から一変、浩史は眉間にシワを寄せて大きなため息を吐く。

「というのも、データ分析が大好きな男で、それいる?というような資料まであれこれ用意しろと言うんです。要は、リスクや問題点を潰すことばかり考えていて、せっかく提案した新しい取り組みがいっこうに進まない。そんな毎日が続いて、正直疲弊しています」

どうやらこの上司が、彼にとってかなりのストレスらしい。浩史はしばし無言になると、グラスに残っていた赤ワインを、ぐいっと一気に飲み干した。

「自分のことは変えられても、他人を変えることはできないじゃないですか。いろいろ僕から意見を言うこともありますが、相手が上司である以上、最終的には彼の方針に従うしかない。どちらかが異動になるまで、今はひたすら我慢です。

いや、ほんと、大企業で良かったです。一生付き合うわけじゃないと思えば、どうにか耐えられますから」

どこか自分に言い聞かせるようにそう言うと、浩史はキュッと唇を一文字に結び、再び口を閉じた。

職場で降りかかるストレスに、一人耐えている浩史。彼はこのことを、妻には多く話していないと言う。

「冗談交じりに、上司が鬱陶しくてさぁ!くらいのことは言ったりしますが、妻は僕がそこまで深刻に悩んでいるとは思っていないはず。仕事の方向性とかの話ならまだしも、人間関係の悩みを妻に愚痴るなんてダサいこと、したくないですしね」

「あはは」と乾いた声で笑う浩史。しかし次の瞬間、ふと何かを思い出したように表情を曇らせた。


「職場でストレスを抱えて、どっと疲れた状態で毎晩家に帰るわけですが、妻とのスキンシップは僕の救いになっていたんです。詳しいことは何も知らない妻が、楽しそうにいろんな話をしてくる。

彼女はとてもポジティブだし話も面白いので、一緒になって笑っているとかなり気が晴れるんですよ。でも…そんな妻が、最近は塞ぎ込んでいたり、ヒステリックになることが増えてしまった」

弱った、という様子で首を振りながら、浩史は「原因ならわかっている」と続けた。

「少し前、週末の夜に、里香に言われたんですよ。私たち、もう1年以上してないんだよ!?って。

その夜、意味深に寄り添ってくる彼女の意図や気持ちに、僕ももちろん気づいてはいました。でも正直、身も心も疲れきっていて…とてもじゃないけど彼女を抱こうという気にはなれなかったんです」

【結婚3年目の危機】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo