1/3のイノセンス ~友達の恋人~ Vol.10

「今…別の女のこと考えてた?」ベッドで彼女に尋ねられた男が、犯してしまったミス

敦史:昨夜の真実


昨夜、僕は杏に会いに行くつもりだった。

ただその直前、優香から“待ってる”と連絡がきた。相変わらずこちらの都合などお構いなし。一方的な物言いに呆れながらも、しかし待っているというのに放置するわけにもいかない。

それで仕方なく、先に優香の元へ行ったのだ。

話とやらを聞くだけ聞いて、すぐに別れるつもりだった。そして杏の元へ急ぐつもりだった。

しかし優香が突如、「私の本気を見て欲しい」などと言い出して…。

「今日、敦史の家に泊まっていい?」
「お願い。今夜は帰りたくないの」

子どもみたいに僕に抱きつき、身体を密着させたまま、優香は甘えた声で僕に尋ねた。

「いや、今夜は…」と、それでも僕は一応、断ろうとしたのだ。しかしそれが逆に優香を頑なにさせてしまった。

「やだ、私帰らないから」

そこからは何を言っても聞く耳を持たず、駄々っ子のように言い張る優香を、僕は結局なだめきることができなかった。

−杏に連絡しなければ。

もちろんずっと、気にかかっていた。

けれども、何をどう説明すればいいのか。この状況を、杏に何と言う…?

いくら考えても結論は出ず、時間ばかりが過ぎた。そしてタイミングを完全に逸してしまうと、もう今さら連絡できなくなってしまったのだ。

…つまりは、優香に流された。情けない話だが、それがあの夜の全てだった。



−俺、杏と付き合うことになった−

会社帰り、偶然出会った健一からそう聞かされ、「マジかよ!よかったなぁ!」などと大げさに盛り上がって見せたあと、僕は優香とともに自宅マンションに戻った。

彼女は昨夜も家に泊まり、今朝も僕の家から出勤している。

しかし優香は昼間のうちに“今日も敦史の家に泊まる”と一方的なLINEをよこした。

そして仕事の後、わざわざ自宅に着替えを取りに戻り、そして再び僕の仕事が終わるのを会社近くで待っていたのだ。

「待たせると悪いから」とやんわり断っても「読みたい本があるからちょうどいいのよ」などと返されてしまうと…僕もそれ以上強く断る理由がない。


「ねぇ。今、何考えてた?」

暗闇の中、不意に響いた優香の声に、僕はハッと我にかえる。

慌てて焦点を定めると、裸のままの優香が上体を起こし、僕の顔を真上から覗き込んでいた。

「別に、何も。ぼーっとしてただけ。…まだ起きてたの」

僕は腕を伸ばし、白く浮かび上がる彼......


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