200億の女 Vol.2

「可愛げがない」と言われてきた恋愛下手な美女に近づく、魔性の男

騙されたのは女か、それとも男か?
「恋」に落ちたのか、それとも「罠」にはまったのか?

資産200億の“恋を知らない資産家の令嬢”と、それまでに10億を奪いながらも“一度も訴えられたことがない、詐欺師の男”。

そんな二人が出会い、動き出した運命の歯車。

200億を賭けて、男と女の欲望がむき出しになるマネーゲームはやがて、日本有数の大企業を揺るがす、大スキャンダルへと発展するが…。

仕事でモナコを訪れていた神埼智(かんざき・とも)は、そこで偶然、ある男に出会う。男は、智の素性を調べ、あることを企むのだった。


東京・霞ヶ関 警視庁 捜査二課


「…シンタロウ、だったっけ?男の名前。調べはどうだ?進んでるか?」

警視庁捜査二課のフロア近くにある喫煙ルーム。そこに入ってきた、二課の係長である上田昌弘(うえだ・まさひろ)の言葉に、一人の男が振り返った。頬骨からこめかみにかけて3cmほどの傷がある、強面の男だ。

「まだ、苗字もわかりませんよ」

タバコをくわえたまま愛想なくそう答えた「傷の男」は福島昭二(ふくしま・しょうじ)。捜査二課は主に、汚職や組織詐欺などの「知能犯」の捜査を行い、エリートとして出世していくキャリア組も多いが、福島はノンキャリア。現場からの叩き上げだった。

身長は170cm程だが、あらゆる格闘技を極めてきたその体は分厚く、ノソノソと歩く。目元の傷も手伝って、刑事にも関わらず、繁華街で職務質問されたことは1度や2度じゃない。

うっすらと白く煙った狭い空間。

喫煙者ではない上田が咳き込むと、一応上司に気を使ったのか、福島が火を消し、2人は喫煙室を出た。コーヒーでもどうだ、という上田の誘いで、自販機まで並んで歩きだす。

「不満そうだな」

上田のおごりだという缶コーヒーを受け取ると、福島はため息をつき、プルトップを開けながら言った。

「上田さんの指示だから、一応調べてますけど…」

「…すまん、上層部の大切なお知り合いってことで、断れなかったんだよ。すまん。形だけの捜査でもいいからさ」

深々と頭を下げた上田に、福島は大きなため息を返し、あーもう!と苛立った声を上げた。

「上田さん、俺が形だけの捜査とか無理な人間なの知ってるじゃないっすか!!」

苛立ったその勢いのまま、福島は、ホットコーヒーだというのに、豪快に喉に流し込んだ。

上田が上層部に押し付けられ、現在福島に調べさせているのは「2億円を奪われた恋愛詐欺事件」。

被害者と名乗る女性が、警視庁を訪ねてきたのは、1週間ほど前のことだった。

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