「彼じゃ物足りない…」元・夫を超える男を探し求める、バツイチ女の苦悩

「今更何を、と言われてしまうかもしれませんが…」

続きを躊躇するように言葉を切る美恵。

そして何かを諦めるようなそぶりで首を振ると、これまで表に出さなかった本音をぽつりぽつりと語ってくれた。

「滝沢さんと一緒に時間を過ごせば過ごすほど、元夫のことを思い出してしまうんです。笑いのツボが違う、会話のテンポが違う、好きな映画が違う…つまり私は、元夫といた時の方がずっと楽しかったことに気がついてしまったんですよね」

「それなら元サヤに、なんて簡単に言わないでくださいね。そういう問題じゃないんですよ。そんなことをしたって何の解決にもならないんだから。私は滝沢さんとの再婚を前向きに考えています。ただ、もう少しだけ彼を好きになる時間が欲しいというか…」

滝沢を好きになる時間が欲しい、と語る美恵。しかしその一方で、彼女は元夫とも頻繁に連絡を取っているのだという。

「元夫とは、そうですね…週に1度くらいはLINEしてるかな。何をって、他愛のない会話です。憎しみあって別れたわけじゃないから、今でも仲良しなんですよ。二人で会ったのは離婚してから数回ですけど、今でもお互いに良き理解者だと思ってます」

元夫のことをそんな風に語る美恵は、これまでで一番明るい表情をしているように見えた。

そのことに自分で気がついたのだろうか。美恵は少し慌てた様子で下を向く。

「わかってます。そんなことをしているから前に進めないんだってことは。…だけどやっぱり、元夫と話す方が楽しくて、つい連絡してしまうんですよね」

「何やってるんでしょうね、私」と呟く美恵。自虐的に笑う彼女だが、その声はどこか達観したかのような響きがあり、何度も何度も自問自答してきた苦悩を感じさせた。

「女って本当に複雑ですよね。身体の関係がないと心が病んでしまう。でも身体の関係があるからって満たされるわけじゃない…。何を優先させるべきなのか、私にはもうわかりません」

悩めるバツイチ女の切ない声が、夏の夜風に吹かれて消えた。

▶NEXT :7月2日 火曜更新予定
いつも「謝る側」になってしまう女

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