男運ナシ子 Vol.9

婚活疲れが限界に…。結婚向きな“The平均値男”に油断して、女がハマった罠

欠点のない、完璧な男などこの世にはいない。人には誰でも長所と短所があるものだ。

しかし、女性が絶対に許せない短所を持った男たちがいる。

浮気性、モラハラ、ギャンブル、借金、ストーカー…

そんな残念男とばかり引き寄せる女が、もしかしたらあなたの周りにもいないだろうか。

橘梨子(たちばなりこ)、32歳もその一人。人は彼女を男運ナシ子と呼ぶ。

この話は、梨子がある出来事をきっかけに、最後の婚活に挑む物語。彼女は最後に幸せを掴むことが出来るのか、それとも…


マザコンモラハラの出会いの後、気持ちを立て直し、結婚相談所に登録した梨子。婚活の基本である、相手に求めるものすら分からず、改めて自分の甘さを実感する。親友、陽菜の助けもあり、2人の男性とのお見合いが決まったのだった


ノー残業デーの水曜日の夜、オフィスに残っている人はほとんどいない。

梨子の会社でも、働き方改革でプライベートを充実させましょうと人事部が啓蒙しているのだ。

梨子は秋の新作のプレス向けリリースを今日中に終わらせなければならず、竜也とともに、人事部から特別に許可をもらい残業していた。

「ノー残業デーの水曜日、みんな何してるんだろうね」

プレスリリースの写真、文言の最終チェックが終わり、2人で一息つく。

「確かにな。まぁ、家族がいる人は家族サービスとか。独身のやつはデートとか?」

「デートか。私、しばらく楽しいデートしてない気がする…」

梨子が肩を落とすと、竜也は少し沈黙した後で、おもむろに切り出した。

「今週の土曜日って空いてる?アラジンのチケットを代理店の人からもらったんだけど、行かないか?」

「すっごい行きたいんだけど…ごめん!その日は結婚相談所から紹介してもらった人とお見合いだ。しかも、2人とも土曜日指定だったから同じ日に会うことになっちゃって…」

梨子はそう言って、はあ、とため息をつく。

せっかく2人の男性とお見合いの予定が確定したものの、なんだかプレッシャーや義務感のようなものを感じていた。これではまるで仕事の延長、いやむしろ仕事よりもずっと梨子にとっては苦行である。

ー竜也とアラジンの実写版、見たかったなぁ…。

「そうだよな。今は絶賛、婚活中で忙しいよな。何かあったらいつでも言えよ!おまえには仲間がついてるぞ」

竜也は、心配半分、応援半分のお父さんのような表情で優しく励ましてくれた。その穏やかな笑顔を見つめながら、梨子はぼんやりと考える。

―竜也って優しいし、誠実だし、結婚したら絶対にいい旦那さんになるだろうな。独身でいるのがもったいないくらい…。

ふと改めて考えてみると、竜也は、梨子が求めている理想の男性そのものだ。

仕事も出来て、頼り甲斐もあり、何より優しい。顔だって端正な顔立ちだし、オシャレでいわゆる醸し出す雰囲気がカッコいい。

彼を狙っているという会社の後輩も多く、アプローチをかけている子も見てきた。

でも、竜也はプロポーズした彼女と別れて以来、誰とも付き合っていない。会社では、"どんな美女に言い寄られてもなびかない難攻不落な男"としてのキャラクターが定着しているほどだ。

「梨子?聞いてる?」

名前を呼ばれ、梨子は我に返る。

―10年近くも友達の竜也のことを急に理想だと思うなんて…。私、婚活のしすぎでどうかしちゃったのかもしれない。

そう自分に言い聞かせたが、その後もしばらく胸がドキドキと高鳴ったままだった。

しかし、梨子に宿った竜也への想いは、すぐに砕け散ることになるのだ。

【男運ナシ子】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo