雑居ビルのエレベーターを上がり、看板のかかっていないドアを開けた瞬間に頭の中で「カチッ」と音がした。日常が非日常へと切り替わったのだ。首都高速3号線を走る車を眺めるという都市的な景観と、素朴だが味わいのあるインテリアとのミスマッチは強烈だ。三宿の『kongtong』は、11年前に田島さんが初めて開業をした店だ。
「やりたかったのは現代的な洋食です。家族や仲間とわいわい楽しめるんだけれど料理は上質、というような。オーソドックスな洋食に見えますが、要素をすべてバラしてゼロから構築しています。洋食をメインディッシュにワインを楽しむ、ビストロ的な使い方を想定しました」
田島さんの店だけあって、料理だけでなく冒頭に記したように立地や空間デザインにも凝っている。このこだわりは、田島さんの現在の仕事ぶりにも通じる。作家やミュージシャンは、デビュー作にすべてが詰まっているといわれる。同じく、『kongtong』には田島大地という人間のすべてのエッセンスが入っている。
田島大地さんが考える 新しいビストロの潮流とは
田島大地さんは、スタイルあるビストロを提案し続けている。ゆえに、田島さんが手がけた店舗を訪れると、ビストロの新しい潮流が見えてくる。ここでは、田島さんが考える新しいビストロのあり方を紹介したい。
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