姉妹格差 Vol.2

「あちら側の人間になりたい…」美人なエリート姉に罵られた、27歳女。逆転のために決意したこととは

「美人で優秀な姉と、できの悪い妹」

幼いときから、2人はこう言われてきた。

妹の若葉(わかば)と、姉の桜(さくら)は3歳差の姉妹。27歳と30歳になった今、その差は広がるばかりだ。

美貌、学歴、キャリア、金、男…全てを手に入れた姉と、無職で独身の妹。

人生に行き詰まった妹は、幸せを掴むことができるのかー?


エリート夫と結婚した姉の桜は、超美人な上に高学歴で、しかも弁護士。そんな姉に対し、司法試験浪人中の妹・若葉は、劣等感に苦しめられていた。

桜の結婚式に出席した若葉は、試験合格を誓い、勉強に励むが…?


「若葉、どうした?元気ないな。やっぱり、明日のことか…?」

佳樹がナイフとフォークを動かす手を止めて、私の顔を覗き込んでくる。咄嗟に笑顔をつくって「…ううん」と誤魔化すも、図星だった。

ここは『bills 銀座』。恋人の佳樹と有楽町で映画を見た帰り、彼の提案でパンケーキを食べに来たのだ。

けれど大好きなふわふわのリコッタパンケーキを前にしても、気を抜くと、ついぼんやりしてしまう。

それもそのはず、なぜなら明日は、運命の分かれ道…司法試験の合格発表日なのだから。

「俺は何か言える立場じゃないけどさ、きっと大丈夫だって。だってあれだけ頑張ったんだから。特にラスト2ヶ月は凄かったよ、俺はとてもあんなに勉強できないよ」

佳樹にそう言われた途端、思い返すだけで背筋がゾッとする、暗黒の"ラスト2ヶ月"の記憶が不意に蘇る。

5月の試験日までは、姉の結婚式を除いて佳樹とも会わず、全ての誘いを絶ち切って机に向かった。それまで1日14時間だった勉強時間をさらに2時間増やし、食事中はもちろん、移動中ですら勉強した。

オリンピックアスリートが本番に向けて体を極限状態にもっていくように、精神レベルの限界値まで自分を追い込んだのだ。

あの、血反吐が出るような2か月…いや、昨年秋の合格発表で落ちてからの8か月を再び繰り返すことなど、到底無理だ。だから、今年は何としても、何があっても、絶対に合格しなければならない。

「ありがとう。あの白いハンカチ、今回も持っていくね」

白いハンカチ、というのは、佳樹が試験前に「お守り」と贈ってくれた、若葉の刺しゅうが入ったハンカチだ。

本番直前、緊張しすぎて鉛筆が握れないほどの震えが走った時、ハンカチを握りしめて心を落ち着かせ、なんとか試験を乗り切った。だからあのハンカチは、大切な大切なお守りなのだ。



翌日、16時半。私は法務省の掲示板の前で、受験票と白いハンカチを握りしめて立っていた。

「私の番号…私の番号…」

呪文のように繰り返しながら、数字を目で追っていく。

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