森脇慶子の「旬カレンダー」 Vol.13

漬けるか、はたまた、蒸すか。ワタリガニの異なる魅力を識る

ワタリガニは山口産。280~300gのものを常に用意。甲羅にぎっしり詰まった卵はウニのようにねっとりと濃厚。どちらも1パイ¥8,640(2~3人前)

別名ガザミ。またその姿形から「菱蟹」の名でも呼ばれるワタリガニ。他の蟹と違い、ボートのオールのような平たい第5脚を使って、海を泳ぎ渡るところからこの名があるとか。一年のうち、身がびっしりと詰まった雄蟹が旨くなるのは秋。対して、雌蟹の甲羅に卵が充実するのは、初夏から夏の産卵期を控えたこの時期。卵を味わうなら、まさに今が旬である。

その卵の持ち味を、ストレートに楽しめる秀作がご覧の二品だ。『赤坂璃宮銀座店』の「岩塩焗鮮花蟹(ワタリガニの塩釜焼き)」と「花彫酔蟹(酔っぱらい蟹)」である。「中国ではワタリガニのことは花蟹といい、豆鼓炒めや卵炒めが定番料理。でも、活けの上質な蟹なら、本来の旨みをシンプルに味わうのが一番。生と蒸しの食べ比べも面白いですよ」とは、譚彦彬オーナーシェフ。数種のスパイスと共に紹興酒ベースのタレに4日間漬け込んだ酔蟹は、ボタン海老を思わすとろりとした身と卵の濃厚な旨みが官能的なら、塩釜焼きはワタリガニならではの絹のような身の繊細さと、火加減も絶妙にややウエットに仕上げた卵のねっとり感が妙味。どちらも上品な味が身上だ。

●もりわきけいこ
美味の食べ歩きに日々邁進し、綿密な取材と豊富な経験に基づく記事で定評のあるフードライター。真の旬を伝えるべく、その時期とっておきの美味にありつける名店を紹介

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