あの子が嫌い Vol.8

“空気の読めない女”に触発されて…。無個性なモブキャラ女子が、一晩で大変身をとげたキッカケ

上京してからというもの、私の人生はパッとしない。

地元では「かわいいリカちゃん」と呼ばれ、散々もてはやされてきたけれど。

私程度の女なら、この街にくさるほど居るー。

地元を飛び出し、憧れの人気女性誌への入社を果たした秋吉りか子(29)は、自分の"無個性"にウンザリする日々を過ごしていた。

そんなある日、中途で採用された一人の女が、りか子の前に現れる。ムッチリとしたスタイルに、やたら身振り手振りの大きな帰国子女。

りか子が虎視眈々と狙っていたポジションを華麗にかっさらっていき、思わず嫌悪感を抱くがー。

まるで正反対の二人の女が育む、奇妙なオトナの友情物語。


人気女性誌「SPERARE(スペラーレ)」で編集長の秘書として働く秋吉りか子。りか子は編集部のポジションを狙っていたが、“小阪アンナ”と名乗るぽっちゃり女子に奪われてしまう。

更に追い打ちをかけたのは、恋人・修一の朝帰りだった。そんな中、りか子は宿敵アンナを陥れようとするが―。


昔から私は、自己主張が苦手だった。

いつだって周りの空気に合わせて、その場にうまく馴染むように喜怒哀楽を上手く調整していた。そうやって過ごしていると、物事は滞ることなく運ぶ。

決して目立たないように感情を殺していれば、誰かの悪意に攻撃されることはない。余計なことを口に出さず、ただ黙って微笑んでいればすべては円滑に進んでいく。

幼馴染の言う“真面目でエライりか子”は、家族も友人も失望させる事なく、マニュアル通りの人生を生きる。

それで万事うまくいき、誰も不幸にはならない。

私、以外は…。



私はアンナの背中を見つめながら、そんなことを考えていた。

同棲中の彼・修一と大げんかの末、家を飛び出してしまった夜。行くあての無い私に「うちに来れば?」と提案してくれた彼女の後ろを追いかけ、目黒川沿いを歩いた。

アンナの堂々としたその後ろ姿に、私は何度も下唇を噛む。

—どうして、私はあなたみたいになれないの…。

彼女の全てが羨ましかった。

アンナを陥れようとして参加した編集部の新年会も、結局はアンナの熱意にいつの間にか感化されていた私が、その場の空気をぶち壊してしまった。

所詮、”無個性なモブキャラ”を脱することの出来ない私には、悪役になることさえも叶わなかったのだ。

—私が大嫌いなのは”あの子”じゃなくて、私自身だったんだ…。

目黒川の水面に映る街灯が、頼りなく揺れている。

それはまるで、今にも消えそうなロウソクの炎のようだった。どんなに頑張っても、決して大きな炎になることはない頼りない光だ。

中途半端な私みたいに…。

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