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  • 「君といるとツラい…」。恋愛より仕事を優先する女が恋人から突きつけられた、甘くない現実

    「ちょっと、仕事頑張りすぎじゃない?」

    東京で一生懸命働く女性なら、一度は言われたことのあるセリフだろう。

    楽しいから仕事に熱中しているだけなのに、時としてそれは恋人からのクレーム要因となることもある。

    恋人よりも仕事を優先させてしまう女は罪なのか?そして、幸せになれないのか…?

    今回は仕事と、恋人探しに奔走する理香(33歳)の場合を見てみよう。


    「じゃあ、まずは自己紹介しましょうか!」

    男性幹事の無駄に大きな声を聞き、理香は誰にも気付かれぬよう小さくため息をついた。

    —どうせ、またいつものアレでしょ…。

    そんな冷めた気持ちはおくびも出さずに、理香は精一杯の笑顔を作る。

    「矢野理香です。港区にあるIT系の会社でデータサイエンティストをしてます」

    そこまで言うと、幹事とは別の男性が「え、データサイエンティストって何?」と身を乗り出すように聞いてきた。

    「えーっと、ひと言で言うと、AIを使ってデータの処理や分析をする仕事です」

    こんな風に聞かれるのはいつものことだ。

    理香は笑顔を崩さぬよう努めるが、目の前の男は首をわずかに傾け、「そっか、SEね。こんな美人なSEさん、うちの会社にも欲しいなー!」と強引に話をまとめて、理香の自己紹介は終わった。

    —ほらね、いつものこと…。

    理香は残念な気持ちを隠すように、愛想笑いでごまかし、自分に言い聞かせた。



    「理香、今日は付き合ってくれてありがとう!」

    不毛だった食事会を終えて、一緒にタクシーに乗った真美は申し訳なさそうな顔を向けてきた。

    学生時代からの友人である彼女に、今日の食事会に誘われたのはつい2日前のこと。一人が風邪で来られなくなったため、その代打として理香が誘われたのだ。

    「食事は美味しかったからいいんだけど、今日の代理店の人たちって、なんであんな抽象的なことしか言わないんだろう」

    天現寺橋の信号で止まったタクシーの中で、理香は小さく呟いた。

    「過去の実績は自慢気に話すのに、今後の具体的なことを聞いてもふわっとしか答えないし。やたら個室が好きだし、有名レストランの予約枠をいくつ持ってるとか芸能人とも友達だとか、そんなことでしかプライドを守れないのかな」

    信号が青に変わり、タクシーが外苑西通りから明治通りに入るまで、理香は一通りの愚痴を吐き出した。

    「まあまあ、落ち着いて。理香さあ、いろいろ言ってるけど、自己紹介の時から機嫌悪くしてたでしょ」

    笑いながら言う真美に、理香は笑顔になって「バレてた?」とはにかんだ。

    「よく知りもしないのに、勝手に理解したつもりにならないで欲しいだけなの。それに私、ぽんぽん新しい話題を振ってくる人よりも、一つのことをじっくり深掘りして話せる人がいいなぁ」

    理香が付け加えるように言うと、真美は困ったような笑顔を見せた。

    「理香ってさ、せっかく美人なのに本当にもったいない。私たちもう33歳なんだから、本気で結婚相手探さないと」

    至極まっとうな忠告をしてくる真美に、「わかってるけど」と唇を尖らせながら理香は頷く。

    たしかに理香は、恵まれた容姿のおかげもあり、楽しい恋愛をしてきたと思っている。世間一般ではエリートと言われる男たちと付き合い、プロポーズを受けたこともある。

    だが理香には、恋愛以上に熱中してしまうものがあるのだ。

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