これぞ江戸前の技!ヒラメの昆布締めが絶品すぎてトロが脇役になってしまうレベル!

鮨といえば、つまみをアテに日本酒を嗜んで、ほどよき頃に握りを頼む…。そんなルールは一切ない。

やっぱり握りが最高に美味しいし、できればずっと握りで行きたい。そんな握りファンに待望の鮨屋がオープンした。

しかもここ、江戸前の技法が天才的で、小魚や白身魚をグッと美味しくしてくれるのだ。

トロやウニももちろん美味しい。でも脇役的な魚を江戸前でいただくのが大人の握り好きといえるだろう。


新しき新橋の美食エリアでとことん握りを楽しみつくせる
『冨所』

再開発が進む新橋周辺。その中でも、サラリーマンの街から美食エリアへと少しずつ変貌を遂げつつあるのが、通称“マッカーサー道路”を隔てた御成門へと続く区域だろう。

和食の名店『新ばし 星野』が移転してきたり、元『スブリム』から今は会員制ワインバーとなった『Cofuku』など手練れな食通たちが通う大人の美食店が点在しているのだ。

その一角に、また一つ新たな注目店が生まれた。11月1日、鮨の日にオープンした『冨所』がそれだ。

ご主人の佐藤浩二さんは、北海道出身の33歳。18歳で地元帯広の鮨屋に入り、5年間の修業後上京。西麻布『鮨真』に弟子入りする。2年ほどして一旦帰郷し、前の店に戻るも、早々に東京へ戻り、再び『鮨真』に。

「扱う魚のレベル、仕事の繊細さ等々。すべてが全く違っていて…。『鮨真』でもっと色々な江戸前の仕事を学びたい。そう思ったんです」

それから5年間、更に研鑽を積み念顔の独立を果たしたというわけだ。

青森県産ヒラメの昆布締め。ヒラメは軽く塩を当ててから昆布で1日〆ている。昆布の旨みとヒラメの旨みがみごとに融合し、余分な水分が抜け、淡い余韻が残る


「朝6時には豊洲に行き、仕込みから接客、後片付けと夜遅くまで全て一人でこなしています。大変ですが、今は毎日が楽しいですね。なんでも自分の思うようにできますから」。

キラキラと目を輝かせて語る佐藤さんだが、優しい笑顔の中、接客の際に見せる眼鏡の奥の眼光は鋭い。自分の鮨をどう感じているだろうか、満足してもらえただろうか―等々。その反応を見極め、更なる精進の糧にしようとしているかのようだ。

「鮨屋は鮨を楽しんでもらえればいいかなと思って」との言葉通り、おまかせのコースは牡蠣の自家製オイル漬けといった一工夫したつまみも出るものの、主軸はあくまでも握り。

愛知県産小鰯。ご主人の佐藤さんが最も好む鮨タネがこの小鰯とか。振り塩して15~20分ほどおいた後、塩抜き。酢には2~3分軽くつけてから、2晩寝かして使っている。「皮の下に薄く付いている脂が旨いんです。鰯ならではの香りも好きですね」とは佐藤さん


その握りも、当節の小ぶりなものに比べれば大きめ。すし飯を食べているという実感をキチンと感じさせるボリュームは、鮨好きの好むところだろう。

魚はもとより米にかける熱意も半端ではない。聞けば、「硬いけれど芯のないシャリが理想」だそうで、米はすし飯用の古代品種を特別ルートで仕入れ、炊き方も試行錯誤。羽釜を用い、火加減をはじめ米のとぎ方、浸水時間etc.理想のすし飯を目指し、日々模索している。

千葉県鴨川産鰆の玉ねぎ醤油のづけ。玉ねぎ醤油につけるのは2分程度。脂がのり、ねっとり柔らかな鰆の身質に玉ねぎ醤油が馴染み独特の旨みを醸し出す


タネも肉厚。ふわっとソフトな食感のカスゴ、玉ねぎ醤油で漬けにした鰆のづけなど一貫一貫の食べ応えは充分。

もちろんウニ、トロも悪くはないが、ここでは、むしろ酢〆にした小鰯やコハダ、昆布〆のヒラメなど小技を効かした魚に軍配をあげたい。

茨城県大洗のカスゴ。カスゴとは、鯛の幼魚のこと。佐藤流は手が込んでいる。さっと塩をした後、湯引き。その後、氷水で急冷するのだが、この時の氷水に赤酢を入れ、冷やしながら酢締めにしているのもユニーク。3分ほどつけて冷蔵庫に入れ皮目を干している。

おまかせコースに出てくる自家製「牡蠣のオイル漬け」。酒蒸しにした牡蠣をサラダオイルに漬け、こくを出している。牡蠣は三陸産。ほど良いオイル感がシンプルなつまみのアクセントに。写真は全て18,000円のおまかせコースから。

Photos/Shouta Kikuchi,Text/Keiko Moriwaki

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