幸せな2人 Vol.5

妻が美しさを失っていくのに、オトコの魅力を増していく夫。"富"を手にいれた開業医妻が不幸な理由

―私は私。他の誰とも比べたりしない。

結婚して、出産する前まではこんな風に考えていたのに。

子供を持ち母となって、劣等感と嫉妬心に苦しめられる女たち。

未だかつてない格差社会に突入した東京で、彼女たちをジワジワと追い込むのは「教育格差」だった。

大恋愛の果てに結婚したエミと、代々続く病院の医師と結婚した実沙子。高校時代の同級生だったふたりはそれぞれ、幸せの絶頂にいたはずだった。

しかし偶然の再会をきっかけに、エミと実沙子の幸せだった日常は少しずつ狂い始めていくー。


結婚により生活レベルが下がってしまった佐々木エミ。一方、リッチな家庭に嫁いだものの、夫の浮気疑惑浮上後、精神的に追い詰められていく森田実沙子。

エミは、夫と娘を愛しているのにもかかわらず、実沙子との再会によって、教育格差を実感。今まで感じたことのない焦燥感から、夫へ辛く当たってしまうのだった。


佐々木エミの夫・健太の変化


いつも側にいてくれる大事な家族こそ、一番大切にしなくてはいけない。

それなのに私は、外では愛想よく振る舞いながら、夫・健太のことは全く大切に出来ていなかった。

言い訳は山ほどある。

初めての育児と仕事の両立だけでも消耗しているのに、小さな娘が胃腸炎になり、夜中に突然嘔吐し始め朝まで眠れないこともあった。

その翌日、職場に気を使いながら仕事を休まなくてはならないのは、当然夫ではなく私の方だ。

またある時は娘が高熱で痙攣を起こし、救急車を呼ぶほどの事態になった。夫はオドオドするばかりで、あまり頼りにならなかった。

保育園で頻繁にウィルスをもらってくるのも、私が家でずっとりあを見ていないせいだと自分を責めながら、小さな小さな娘の体を必死で守るのに精一杯だったのだ。

その頃の私は、"完璧な母親"でいることに、あまりにも囚われていたからー。

だからあの朝、突然夫がドアの前で動けなくなってしまったことも、あまり気に留めていなかった。

「…健太?どうしたの?」

そう声をかけても、生気のない目で「ちょっと体調が悪い」とつぶやく夫の変化に気が付かなかったのだ。

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