A1:大人のモテ・ポイントは話の“引き出しの”多さ&ベタ過ぎる王道テクを駆使せよ!
—信彦:今度、皆で同窓会しようよ!
一週間後。信彦から来たLINEに、私は適当なスタンプで返信する。
正直彼はどうでも良かったが、久しぶりに皆に会いたい気持ちもあったし、他の優良物件を掘り起こせるかもしれない。
そんな気持ちで、私は同窓会に参加した。
◆
同窓会当日、懐かしい面々が梅田にある『鯛之鯛』に大集結した。海鮮料理が豊富らしく、洒落た雰囲気のお店だ。方々に連絡してくれた信彦のお陰で、総勢10名ほどが集まった。
「美香、この間は偶然だったね~。飲み物、何にする?」
着くと、信彦がすぐ声をかけてきた。
「ハイボールにしたいんだけど、何がある?」
本当にイイ人なんだけどなぁ、そう思いながら、信彦が差しだしてくれたおしぼりで手をふく。すると信彦はドリンクメニューを見せながら言った。
「『ジムビームハイボール』があるよ。」
「ジムビーム?何のお酒?」
「アメリカ生まれの、世界で一番売れているバーボンだよ。後味がすっきりしてて、女の子でものみやすいと思う」
―ほぅ・・・。
こんな風に自分の知らないことをさらりと言われると、思わずドキっとしてしまう。大人になると、顔や運動神経などよりも、自分の知らない世界を教えてくれる人に魅力を感じるのは私だけなのだろうか。
「じゃあ、わたしもそれにしよっかな」
そうして信彦と同じ「ジムビームハイボール」を頼むと、運ばれてきたジョッキには、黒と赤を基調にしたスタイリッシュなロゴが描かれていた。そのデザインが私好みで、テンションが上がる。
久しぶりのメンツで飲むお酒は、美味しかった。信彦にそれを告げると、満面の笑顔で言った。
「これ、飲みやすいから皆で楽しく盛り上がりたいときにぴったりなんだよ。美香、ちょっと緊張してると思って」
―緊張してるって、バレてた・・。
最近婚活中で、男性をつい品定めしがちだった。しかし今日はそんな信彦の気遣いもあって、いわゆる男性を見定めるツンケンした気持ちはなくなり、その場を純粋に楽しんでいる自分に気がつく。
「飲み物、大丈夫?」
ほろ酔い気分で楽しんでいると、飲み会中ずっと笑顔で皆をまとめながら動いている信彦にふと目がいく。
—本当に、この人はいい人だなぁ・・・。
そう思っていた時だった。寒そうにしていた私に気がつき、そっと自分のジャケットを貸してくれたのだ。
「ごめん、俺のでよければ。一応、臭くはないはず(笑)」
信彦は、ちょっと恥ずかしそうにそう言った。そのさりげない気遣いに、不覚にも心がフワッとなった。
◆
「美香、今度食事いかない?いつ空いてる?って危ないから中歩きな」
店を出て、信彦が話しかけてくる。
そしてその時も、ごくごく自然に自分が車道側へ行き、私を歩道側へとやってくれたのだ。
―あれ?こんなスマートなことができる人だったの?
学生時代は気づかなかったが、信彦は女性が喜ぶツボを抑えている。そして意外に、女はこういった単純なモテ・テクに弱い。
「んー・・・?来週木曜だったらいいよ。でも翌朝早いから1軒だけね」
念のため「早めに帰る」と布石はきちんと打っておきながらも、信彦と会う約束を楽しみだと思う自分がいた。