2018.10.28
オトナの恋愛論Special Vol.3A2:真面目な人が“意外にいい店知ってる”のはポイント高い。
そしてデート前日。
私は信彦から来たメールを見て、少し驚いた。
それは私がかねてから気になっていた、今年8月にできたばかりの福島にある『うらきん~福島金魚はなれ~』だった。女子には嬉しい旬の野菜を使ったメニューが豊富で、正直、信彦は知らないと思っていたのだ。
—あれれ?意外に良いお店知ってるんだ・・・
さすがテレビ局員だ。単純かもしれないけれど、こういったちょっとしたセンスの良し悪しはとても大事である。楽しみな気持ちがぐっと増し、デート当日を迎えた。
しかし毎度のことながら支度に時間がかかり、店に5分ほど遅れて到着した。
「ごめん!待ったよね?」
「いや、全然」
それでも笑顔で迎え入れてくれる信彦は、やはり優しい。そして私が席に着くと、おしぼりを持ってきてくれた店長が話しかけてきた。
「この前取材してくれた原田さんじゃない!?ありがとう、あれからお客さん増えたよ~」
その褒め言葉に、信彦ははにかんだ笑顔を見せた。少年のような嬉しそうな表情に、私は少しきゅんとする。
「美香、飲み物どうする?」
「ノブは?」
「そうだなぁ。あ、『ジムビームハイボール』にしようかな」
「この店にもあるんだね。じゃあ私もそれにしよう」
この間飲んだときの、楽しかった思い出がよみがえる。今日のような、デートで行くこじゃれた雰囲気のお店にあるのも嬉しかった。
信彦が教えてくれて初めて知った、お酒。あのあと色んなお店で見かけたし、女子会で頼んでいる子もいた。そして今ではすっかり、私のお気に入りになっていた。
信彦はそのまま店長に「ジムビームハイボール」を頼み、パパッと料理も決めていく。野菜ソムリエが作っているという野菜料理は、どれもとても美味しそうだった。
―意外に、こういうオーダーのセンスもあるんだよなぁ・・・
「そうだ。美香、トマト嫌いだよね?トマトは、無しだな」
オーダーをしながら、少し感動する。信彦がまさかそこまで覚えてくれているとは、思っていなかった。
話したことを覚えてくれているのは、とても嬉しい。
「よく覚えてたね!ノブが嫌いな食べ物は・・納豆だっけ?」
「そうそう。でも今のは絶対あてずっぽうだよね?(笑)」
心地の良い空気が、2人の間に流れる。
信彦が担当する番組の裏情報を教えてくれたり、仕事の愚痴をひたすら一生懸命聞いてくれる。
―この人やっぱり、悪くない。
“マジメくん”なのは相変わらずだが、そもそもチャラくないテレビ局員というのは貴重な存在であり、かなりの好物件である。
それに2人で話してみると物知りで冗談も言ったりするし、話が止まらない。男の意外なギャップは、女心をくすぐるのだ。
気づけば肩肘張らず、見栄も張らず、この間の同窓会のように自然体でいられる自分がいた。
「今日は楽しかったな〜」
嬉しそうに言う信彦を見て、私は思わずそっと後ろから手を握る。
「そうだね」
今日も「ジムビームハイボール」を飲みながら、心ゆくまでとことん話せたからだろうか。
信彦といると、結婚するためだけに自分を偽って、無理をしていた自分に気づいた。自分らしく、楽しい時間を過ごせること。そんな大切なことに、私はようやく気がついたのだ。
“真面目で決め手に欠ける”なんて、彼を値踏みしてしまっていた自分を反省する。
回り道をしてしまったけれど、今年は、素敵な冬になりそうな予感がした。
▶美香のお気に入りとなった「ジムビームハイボール」はこちらから
今回の『オトナの恋愛論』では、「マジメ男編・信彦」「チャラ男編・拓人」の2本のストーリーをお届けしました。
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<オトナの恋愛論 Special特別クイズ・答え>
チャラ男・拓人とマジメ男・信彦。
正反対なタイプな2人の男の、ある共通の魅力とは…
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