32歳。
それは多くの女性が人生の岐路に立つ年齢である。
大人の女性として完璧に振舞えるほどではなく、かと言って20代のときのように“若さ”で勝負はできない。
Age32。岐路に立つ女たちが、この年齢で手に入れておくべきものとは?
今年32歳を迎えた古市花純(ふるいち・かすみ)の部署に、社内でも評判の美女・青井千秋(あおい・ちあき)が異動してきた。
千秋に居場所を奪われる気がして焦る花純だが、同期の衣笠美玲は同じく32歳となった今も、未だに堂々として輝きを失っていない。
それはいったい、なぜ?
−疲れてる…。
金曜日。朝、鏡に映る自分に、花純は小さくため息をついた。
たった今起きたばかりだというのに、花純の肌はどういうわけか既に疲れている。
洗顔を終え化粧水を叩き込んでも水分を飲み込む力がどうにも弱々しく、ファンデーションを塗っても馴染みが悪い。
こんな不調を特に感じるようになったのは、ここ最近のことだ。
花純はもともと肌が強く、これまで大きなトラブルはなかった。多少夜更かししようが、深夜まで飲み歩こうがまったく平気だったのに。しかし最近、無理をすると確実に翌日の肌にそれが現れるのだった。
化粧も気分も乗らないままメイクを続ける花純は、ふと、先日見かけた衣笠美玲のことを思い出した。
−美玲、相変わらず綺麗だったなぁ。
もちろん彼女も花純と同じく年を重ね、20代の頃とは体つきも顔つきも違っている。
しかし美玲には“若さ”とはまた別の、輝きが宿っているように見えたのだ。