恋と友情のあいだで 〜里奈 Ver.〜 Vol.9

「夫は、出張なの」背徳感に揺れる男の欲望を解き放った、人妻の誘惑

友情が砕けた瞬間


「お待たせ」

私より少し遅れ、セルリアンタワー東急ホテル内のバー『ベロビスト』にやってきた廉は、どことなく不機嫌そうに隣のカウンター席に腰を下ろした。

つい先ほどまでの酔いはすっかり冷めているようだが、廉はまるで学生時代のようなぶっきらぼうな口調で「ビール」とバーテンダーに頼んだ。

「時間、平気なの?旦那は?」

「出張よ。あれを出張と呼べるのか分からないけど」

私が自嘲気味に答えると、廉は「そういう言い方はやめとけよ」と、目を合わさずに答える。

「そっちこそ、奥様をシンガに一人残して大丈夫なの?」

「...さぁ」

そうして私たちは、ほとんど無言のまま暫くの時間を過ごした。

海を越えていたときは毎晩連絡を取り合っていたのに、いざその姿を目の前にすると、身動きが取れなくなる。だが、この沈黙はむしろ心地良いものだった。

もっと若い頃は何を考えているのか分からなかった廉の心境が、言葉はなくとも何となく伝わる。おそらく彼も同じだろう。


24時のラストオーダーで最後の一杯を頼むと、私たちの間にはピリッとした緊張感が生まれた。

しかし、それでもお互いに核心に触れることはなく、私は次第に退屈し始めた。

自分でも一体何を期待していたのかは分からないが、廉との二人きりの時間は思ったほど昂揚するものでもなく、ただ時......


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