【東京ピープルコレクション No.1】
名前:浅丘 みさ絵(年齢非公開)
職業:専業主婦
住まい:港区白金
趣味:ココアとモモ(トイプードル)のブログを書くこと
浅丘さんが初めてハワイに降り立ったのは、今から30年前、1988年の春のこと。
新婚旅行の行き先として、ご主人におねだりしたそうだ。
「小さい頃、母が口ずさんでたの。“あのホノルルの 椰子の並木路 ホワイトホテル”ってね。」
今はもう、知らない人のほうが多いだろう。
戦後間もない日本人の憧れをさらった歌謡曲「憧れのハワイ航路」の一節を、懐かしむように彼女は口ずさむ。
この歌詞に出てくる“ホワイトホテル”がどのホテルなのかは諸説ある。彼女の場合、ご主人が新婚の妻を喜ばせようと見つけたのが、ホノルルに白く美しく佇むハレクラニホテルだったと言うわけだ。
「そうねえ。言葉にするのは難しいのだけど、あの独特の雰囲気が最高なのよ。」
ハレクラニの魅力を教えて欲しい、との問いに、彼女は困ったように眉をしかめる。
今の住まいにも、ハレクラニで購入したルームフレグランスを常備していたそうだが、現地で感じる香りとはやはり少し違うらしい。
「やっぱり、一緒にあの場所に行かないと、お分かりいただけないかも。」
トロピカルアイスティーのストローに指をかけ、困ったように肩をすくめる。
「あのね、私にとってはハレクラニって、遊びに行くっていうより、“帰って来た”っていう感覚なのよ。
うっとりした瞳で語る彼女いわく、初めてハレクラニに足を踏み入れた瞬間から、まるでふるさとに帰ったときのように心が落ち着いたというのだ。
「ほら、私って瞳の色が茶色いでしょう?ご先祖様にハワイの人がいたのかもしれないって、主人が言ってたの。向こうではよく現地の男の人から声をかけられたし、やっぱりそう見えるのかしら……?」
「その度に主人が拗ねたのよ」と、懐かしむように遠くを見つめる彼女は、全く以て生粋の純日本人に見えるが、見る人が見れば違うのかも知れない。
そんな彼女のハレクラニでのおすすめの過ごし方は、「何もしない」ということ。
有名なカトレアプールのビーチチェアで横になっているだけで、夕方になっていることもよくあるらしい。
“ハレクラニおばさん”のあだ名をつけた娘さんと一緒にプールで過ごした時間は、彼女の人生の中でも幸せな思い出の1ページにになっているという。
「たまにプールボーイがアイス・キャンデーなんかを持って来てくれたりしてね。普段はお砂糖が入っているお菓子はあげないようにしていたけど、これだけは別。娘も喜んでいたわ。」
昨年結婚し、家を出たという娘さんの話をする顔は、少し寂しそうだ。
「…あら、ごめんなさい。そうそう、お気に入りの部屋の写真、ご覧になる?」
彼女のお気に入りの部屋は、“ダイヤモンドヘッドオーシャンフロント”。
いわゆるスイートルームではないが、ハワイの象徴であるワイキキビーチとダイヤモンドヘッドが美しく眺められるところが気に入っているらしい。
「ここ10年は、チェックアウトの時に次の宿泊を予約して行くから、お気に入りの角部屋をキープしてもらって、もう眺めは最高よ。」
ダイヤモンドヘッドが放つ”気”と、ハレクラニのエネルギーが合わさると、そのパワーが全身にチャージされ、チェックアウトの日にはまるで生まれ変わったような気分になるそうだ。
そんな浅丘さんだが、昨年の年末から今年にかけて滞在したハレクラニで、驚きの出来事があったそうだ。
いつものように、レセプションではお帰りなさいの声で暖かく迎えられ、カクテルパーティーでは顔なじみの支配人と久しぶりに挨拶をし、いつもと変わらずご主人と楽しんでいた矢先のことだった。
「最終日にね、『ラ メール』でのディナーのあと、主人に言われたの。“離婚してほしい”ですって。」
私の大好きな場所でそんなこと言うなんて、ひどい男でしょ?
その軽い口調とは裏腹に、彼女の顔は強ばっていた。
この記事へのコメント
瞳が茶色の日本人なんてたくさんいる笑