2018.07.21
SPECIAL TALK Vol.46小売業の問題解決のために問屋機能も併せ持つことに
金丸:そこから園芸用品を手掛けるようになるんですね。
大山:ただ園芸には、ひとつ問題がありました。それは極端にシーズン性が高いということです。園芸用品が一番売れるのは春。特にゴールデンウィークです。その時季に天気がよければ、「園芸でもやるか」と考える。でも雨だったら……。
金丸:やる気が起きない。
大山:そう。天気に大きく左右される。しかし、小売の仕入れは半年前には計画を立てなければなりません。大量に在庫を抱えるのは誰でも嫌ですから、そこそこの発注量にする。そうすると天気がよい日が続けば、売り場からあっという間に商品がなくなってしまう。
金丸:大きな機会ロスです。
大山:うちは問屋経由で商品を卸していましたが、小売店にも営業マンを派遣して、お客様の声を拾うようにしていました。だからよく「おたくの商品、こんなに売れてるのに、なんで持ってきてくれないの?」「いや、うちの工場にはいっぱいあるんです」「だけど、注文したってこないやんか」と、お客様からお叱りを受けていました。
金丸:小売は問屋に注文を出すけど、問屋には在庫がない。
大山:問屋は中継ぎ業ですから、在庫のリスクは取れません。小売から言われた数字は確保するけど、それ以上は絶対に抱えようとしない。でも小売は、売れたときにすぐ商品が欲しい。そこに大きなギャップがあったわけです。
金丸:それに目をつけたことが、アイリスオーヤマが単なるメーカーではなく、問屋機能も代替する「メーカーベンダー」として独特の地位を築くきっかけになった。
大山:とはいえ、われわれとしては問屋と喧嘩するわけにはいきません。
金丸:小売店側の要望に応えるかたちで、メーカーベンダーに変わっていったんですね。
大山:しかし、事情はどうあれ、問屋さんにとってみれば、天敵が現れたことに違いはない。だから、あることないこと言われましたよ。おかげで流通では、うちの評判は非常に悪かった。振り返ると、その悪評が払拭されるまでが、一番大変な時期でしたね。
市場ではなく消費者を見る「ユーザーイン」を徹底する
金丸:わが家は犬を飼っているんですが、ペット用品は全部アイリスオーヤマなので、てっきりペット用品で成功した会社だと思っていました。
大山:ペット用品に参入したのは、園芸のあとです。当時はまだ高度成長の時代で、身の回りに物が溢れ、「満足社会」と言われていました。でもそこには「物の満足」しかなかった。だから、次に必要とされるのは、ゆとりや安らぎといったアメニティだろうと。そこで「快適生活」をキーワードに、生活の中のアメニティをやろうと考えました。
金丸:たしかに園芸にもアメニティの側面があります。
大山:でも家に庭がない人もいれば、土いじりが好きじゃない人もいる。それで、ペットに注目したんです。うちでも犬を飼っていましたが、妻や子どもが家族のように接しているのを見て、犬を家族の一員と考えるのが、そのうち当たり前の時代になるだろうと。
金丸:犬は番犬として、庭の犬小屋に鎖でつないで飼うのが、昔は当たり前でしたよね。
大山:そうですね。でも家族の一員だったら、鎖につなぐなんておかしいでしょう。だから、首輪でつながなくてもいいように、ケージやサークルを作りました。それにベニヤ板製の犬小屋はすぐにカビが生えるし、有害なホルムアルデヒドも発生するので、プラスチック製に変えて洗えるようにしました。
金丸:そうなんですか。驚きです。ペットが快適に暮らせる環境を日本で最初に作ったのは、アイリスオーヤマなんですね。
大山:ペット用品のあとは、収納、工具、文具、旅行用品へ広げていきますが、単に売れるからとか儲かるからではなく、常に世の中にソリューションを提供していきたいんです。われわれはオイルショックをきっかけに、プロダクトアウトからマーケットインに切り替えました。より正確に言えば、マーケットインではなくて、ユーザーイン。市場ではなく最終消費者を見て、彼らが何を求めているのか、何を不便に思っているかを拾い上げ、製品を生み出しているんです。
金丸:その哲学があるからこそ、さまざまな分野でヒット商品を生み出すことができた。
大山:下請けの小さい工場から始めたことも、僕の強みですね。営業から経理、クレーム処理まで、すべて自分ひとりでやらなければなりませんでした。おかげで全体最適で物事を見るくせがつきました。それに、ものづくりの原点を知っていることも大きかったと思います。マーケティングは知っていても、ものづくりがわからない人はたくさんいますから。
金丸:それこそ、大学で経営を学んだだけの人は現場を知らないし、現場の人の気持ちもわかるはずがありません。
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