SPECIAL TALK Vol.46

~消費者が求めていることに耳を傾ければヒット商品は必ず生まれる~

140万社のデータを分析し経営危機から脱出する

金丸:ここまでのお話だと、大山さんの人生には大きな失敗がありませんね。

大山:いや、順調だったのはここまで。その後は大変でした。育苗箱の主要マーケットは北海道、東北なので、宮城に工場を作ることにしたんです。27歳のときに工場が完成し、さあこれからというときにオイルショックが起きまして。石油由来製品が暴騰し、2年ほどはよかったんですが、石油が一気に値下がりした瞬間に市場が崩壊してしまって、債務超過寸前にまで追い詰められました。

金丸:そんなに厳しい時期があったとは。そこからどうやって盛り返したんですか?

大山:周りを見てみると、プラスチックメーカーが全部潰れたわけではなく、うちよりも技術レベルが低い会社やブランド力のない会社が生き残り、利益を上げていました。では、なぜうちがだめになったのだろう、何が違うんだろうと必死に考えました。

金丸:結果、何が違っていたんですか?

大山:それは、お客様の声に応えながら製品を作っていなかったということです。要するに、マーケットインが徹底している会社は強いことがわかった。だからうちも、そういう会社になろうと決意しました。

金丸:なるほど。それまでは製品主体で考えていたと?

大山:僕が20代の頃は、常にプロダクトアウトでしたね。頭にあったのは、技術力を上げるとかシェアを上げる、価格を下げる、商品を売るということばかり。それは製造業の王道だけど、不況になると非常にもろい。

金丸:今の家電メーカーがまさにそうですね。販売を外部にまかせて、エンドユーザーから遠くなってしまったことで、15年前までは飛ぶ鳥を落とす勢いだった企業が競争力を失った。しかし、どのようにして、マーケットインを実現させたのですか?

大山:地方の企業が生き残るには、ニッチなマーケットで強みを発揮するしかありません。僕は会社の業態転換をするために、まず帝国興信所、いまの帝国データバンクから140万社の企業情報を数百万で買いました。赤字なのに(笑)。そして、「強みを生かせる」「将来性がある」「収益性が高い」の3つの観点で、一次産業からサービス業に至るまで、すべての業種をバーッとチェックしたんです。

金丸:全部読んだんですか!? 凄まじいデータオリエンテッドですね。

大山:すべてチェックするのに、半年かかりましたよ。

金丸:それでニッチなマーケットは見つかったんですか?

大山:はい、それが園芸でした。苗育箱で培った技術とノウハウがあったので、これはいけると思いましたね。人と同じものを作っていたら、価格でしか勝負できないことを下請け時代に経験していました。だから、僕は常に他社にはない強みを生かそうとを考えていました。単に素材をプラスチックに切り替えるだけの会社だったら、園芸という畑違いの業界に次の一手を打つなんてできなかったと思います。

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