千載一遇のチャンス。一目惚れした彼女との再会
実は聡史は、今まで地味な部屋に住んでいたため、外資系コンサルタントの同僚が新卒時代から連日繰り広げていたようなオシャレなホームパーティーのホストを務めた経験がない。
これまでは常に客の立場で適当なワインを片手に人様の家にお邪魔していただけで、むしろ「おもてなし」は苦手であるとすら言える。
しかし、潤也の提案にのらりくらりと空返事をしていると、ホームパーティーは2週間後の週末に開催しようと強引に決められてしまった。
―とりあえず、家具とか食器を一通り揃えなきゃいけないよな...。
聡史は記憶を頼りに同僚たちの部屋を思い浮かべながら、機能美を兼ねた空気清浄機やデザイン性の高い食器を探し、こだわりのアイテムを急いでインターネットで注文する。
だが、焦る聡史をよそに、潤也はホームパーティーの予定をどんどん詰めており、気づけば「聡史のホムパ」というグループLINEまで出来上がっていた。
―何だよ、このLINEは...。一体誰が来るんだ?
恐る恐るメンバーを確認すると、そこには潤也以外に2人の女性の名前が並んでいる。パーティーのメンバーは4人であるようだ。
そして、“AMI”と表示されたプロフィール写真を目にした瞬間、聡史はスマホを持つ手が思わず震えた。
―まさか...!亜美ちゃんがウチに来る...!?!?
何を隠そう、彼女はほとんど一目惚れと言えるほど、聡史の記憶に強烈な印象を残している女性だったのだ。
亜美とは数ヶ月前、潤也主催の食事会で出会った。
聡史はそういった会にそれほど精力的に参加する方ではないが、32歳の独身男は、世間ではわりと重宝されるらしい。
参加するしないは別として、この種の誘いは週に何度もあった。だが正直、暇つぶしのように参加する食事会に、本気の出会いを求めたことなどない。
悪気はないが、参加者の女性たちは皆どこか同じように見えたし、そもそも大人数の場で自分をうまく売り込めるほど、聡史はコミュニケーション能力の高い男ではなかった。
にも関わらず、亜美だけは格別だったのだ。
3歳年下で大手航空会社のCAである彼女は、清楚な外見も然り、会話のセンスも高く、何より所作の美しい女性だった。
初対面の女性にあれほど見惚れた経験は、人生初とも言えるほどだ。
だが聡史は、あまりの緊張に亜美との会話もままならず、デートに誘うどころか、連絡先すら聞けずに終わっていた。
―これは...千載一遇のチャンスかもしれない...。
ホームパーティーなんてもともと苦手であるし、非社交的な聡史にとってはプレッシャーも大きい。けれどこれは、願ってもないチャンスである。
気づけば億劫な気持ちは吹き飛び、聡史の心は踊っていた。
だが、しかし。
ホームパーティーのLINEの会話が進むにつれて、聡史は思わぬ難題を抱えることになってしまった。