―気になるあの子が、僕の部屋にやってくる...!?
外資系コンサルティングファーム勤めの聡史(さとし)は、32歳・独身の好青年。
最近六本木一丁目の豪華なマンションに引越したばかりだが、その新居に、以前一目惚れしたCAの彼女が遊びに来ることに...!
エリート港区男子にも関わらず、実はちょっぴりウブな聡史。
そんなピュアな男の淡い恋は、叶うのか…!?
―いい眺めだ...。
聡史は新居のバルコニーに、もう1時間近くも佇んでいる。
片手には、「引越し祝いに」と不動産屋の営業がプレゼントしてくれたシャンパン。
六本木一丁目のこの高層マンションからは、東京タワーも至近距離で眺めることができ、まさにこの都会を手中に収めたような至福のひと時を味わっていた。
―思い切って引越しを決意して、本当に良かったな。
聡史はこれまで、自分と同じような外資系企業に勤める仲間たちとは異なり、コンシェルジュもなければ二重セキュリティもない、オシャレとは言い難いごく普通の田町のマンションに暮らしていた。
もともと散財ができないうえ、あまり派手に振る舞うのも苦手な性格なのである。
だが、今年はとうとう念願の昇進が叶ったため、自分へのご褒美として少々敷居の高いこのタワーマンションに引越しを決意したのだ。
―どうせなら、いい家具を揃えて、もっと居心地のいい部屋にしよう。
聡史はもう4杯目になるシャンパンに口をつけながら、先ほど六本木のTSUTAYAで購入したライフスタイル誌をうっとりと眺める。
するとスマホが、会社の同じチームの同僚・潤也からの着信を知らせた。
「よぉ、聡史!聞いたぞ、あの六本木一丁目のマンションに引越したんだろ?!お前の家でホムパやろうぜ!」
聡史は「お、おぅ」と頷きながらも、内心ではヒヤヒヤと焦っていた。