セカンドの逆襲 Vol.5

セカンドの逆襲:男の30歳は遊びたい盛り。彼氏と思っていた男が本命彼女と絶対に別れない理由

こんな所で引き下がれない


「で、ちゃんと別れて来たのよね?」

「ううん…どうしたらいいか分からなくて…まだ迷っているの」

その返答に、里衣からはこの期に及んでまだそんなことを言っているのか、と呆れている様子が伺える。

一瞬怒られるのでは、と怯んだ香織だったが、拓斗と付き合い出してから料理など頑張っていた様子を知っていたからだろうか。彼女は諭すような優しい口調で言う。

「でも…そんな酷い男と、付き合う意味はないよね?それとも、セカンドでも良い、とか思ってるの?」

「セカンドは…イヤ。でも、拓斗は香織が一番で、彼女とは別れるって言ってくれてるの…」

冷静に考えれば、こんなの”浮気男の陳腐な常套句”だと気づく。

けれど、脳内お花畑状態だった香織は、その事にさえ気づくことができなかった。というより、心のどこかで必死に否定していたのだ。

「それってさ、口で言っているだけじゃないの?香織、しっかりしなよ。騙されていたんだよ?」

「…でもね、拓斗の話を聞いていたら、故意に騙すつもりはなかったんじゃないかなって思えてくるの…。それにね、あれだけハイスペックな男性だったら、このくらいのこと乗り越えなきゃいけないんじゃないかって…」

香織は自分自身で、「でも」「だって」と、必死で言い訳を並べているのに気がついていた。

里衣もそんな様子を察したのか、一通り「うんうん」と聞いてくれた後、最後に冷静に言った。

「香織は、今は別れたくないのね。でも、それならもっと傷つく覚悟でいた方が良いよ。話を聞いていると、拓斗さんはやっぱり卑怯だと思う。それでも良いなら、香織の気がすむまで、とことんやったら?泣きたくなったら、胸くらい貸すからさ」

香織は、里衣の言葉にまた涙が出そうになった。

自分が欲しかったのは冷静な判断ではなく、こんな風に、自分を分かってくれて背中を押してくれる親友の言葉だったのだ。と同時に、急に自分が情けなくもなる。

けれど、どうしても、今ここであっさりと引き下がるワケには行かないのだ。

「ありがとう。里衣が居てくれて、本当に良かった。バカな女なのは分かっているけど、今ここで引き下がりたくないの。仕返しするにしても奪うにしても、自分の気がすむまでとことんやることにするわ!」

「ほんと…バカだよ。でも、頑張って。悪いのは向こうなんだから。香織はちゃんと幸せになれる道を探してね」

里衣との電話を切った後、香織はなぜかメラメラと闘志を燃やしていた。


—そうだよ…私は何も悪いことはしてない。だから、こんな所で引き下がれないわ!結婚している訳じゃないし…。拓斗が本気で私と付き合う気があるなら、奪い取ってやる!

里衣の言葉に力をもらった香織は、もう拓斗が自分を騙していた、という事実がどうでも良くなっていた。

それよりも、ど......


【セカンドの逆襲】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo