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  • “結婚願望のない元彼”が忘れられない29歳女。3ヶ月ぶりに連絡を取ろうとしたときに起きた嬉しい誤算

    私らしさって何だろう。
    私の“好き”って何だっけ…?

    元彼への想いが強すぎて、過去からなかなか抜けきれない、外資系IT会社勤務の折原美玲(29)。

    しかし彼女はある意外なことがきっかけで、徐々に自分らしさを取り戻していく。


    私の大好きだった彼、永原淳平にはありとあらゆる“コダワリ”があった。

    それをコダワリと言えば聞こえはいいが、周囲の友人に言わせると単なる“ワガママ”であり、全て受け入れている私は彼を甘やかしているだけらしかった。

    例えば朝昼晩は基本的に食べるものが決まっていて、たまに外食しようと言うと嫌がるとか。洗濯物はタオルと下着とワイシャツを全てきっちり分けて洗濯し、私がうっかりタオルの入った洗濯機に下着を入れようものならたちまち不機嫌になるとか。

    朝食べるシリアルの銘柄も
    着る洋服の色とブランドも
    朝、起きてから聞く音楽も

    全て“永原淳平流”が決まっていて、それを乱されるのをひどく嫌がった。

    でも私は彼のことが大好きだったから、付き合って1年の間、それを受け入れる努力をした。

    基本的にデートは全て家だったから、彼好みの食事を作り、彼好みの音楽を聞きながらそれを食べ、決まった時間に一緒にベッドに入って眠りに就いた。

    身長170センチ、釣り目で、仕事ではハッキリものを言う私は強気なタイプに見られるが、永原淳平だけには滅法弱かった。私は最高の恋人でいられるよう、最善の努力を重ねていた。

    ……それなのに。

    それなのに、その努力もむなしく、29歳の誕生日にあっさりと振られてしまったのだ。

    私は、大好きな彼とこのまま結婚したかった。だからそれとなくそう言ったら「俺にそのつもりはない。結婚を期待しているんだったらこのまま付き合えない」とはっきり言われてしまった。

    「じゃあ、別れるしかないってこと……?」

    今にも泣きだしそうな私に、喧嘩のときにだって絶対謝らない彼が一言だけこう言った。

    「ごめん」

    そのあと、私は彼の家からどう帰ったのか、記憶がない。

    会社の元同僚だった永原淳平は35歳。会社を辞めて起業準備をしていた彼は、当分結婚する気はないと言った。

    私はその日からしばらく、ぐしょぐしょに泣き続けた。

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