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週末は真子の両親に挨拶へ行ったが、帰り道、圭一は落ち込んでいた。
真子の父は、挨拶に来た圭一に終始むすっとして、一向に目を合わせようとしなかったのだ。真子が少し腹を立てながら「お父さんも何か話してよ」と言うと、圭一に面と向かってこう言った。
「何だか…君は、頼りない男だな」
昔から歯に衣着せぬ物言いをする真子の父は、少年のような性格をしており、好き嫌いがはっきりしている。一人娘である彼女を嫁に出すのが寂しかった、というのもあり、圭一にいい顔をしなかったのだ。
「ごめんね…。父があんな態度をとって」
「いや…。もっとお義父さんに気に入ってもらえるよう、頑張らないとな」
そう言った圭一の横顔は、心なしか疲れているように感じた。最近仕事が忙しいと言っていたから、そのせいだろうか?
「そう言えばさ、結婚式どうしようか?どこでやる?」
真子は明るい話題に変えようと、話をふった。
「結婚式か…。僕、できればやりたくないんだ…」
圭一の言葉に、思わず「えっ?」と聞き返した。結婚式をやりたくない、と言われるとは思っていなかったのだ。
「やりたくないって、なんで?」
「うーん…。結婚式ってさ、やる意味が分からないんだよね。僕たちのために、友人や会社の人達にわざわざ来てもらう割に、結婚式では全然話せなかったりするでしょう?自己満足のようで申し訳ないって思う。それに、準備も色々大変だって言うし」
圭一のネガティブな発言に、真子は少し焦りを感じた。
「でもさ、例えばハワイウエディングとかどうかな?人もそんなに呼ばなくて良いし、圭一ハワイ好きでしょう?」
「うーん…。でもするとなると、親の意向が入ったり、結構色々と面倒だしね…。仕事も忙しいし、やりたくないんだ」
真子はどうにか圭一に考えを変えてもらえないかと試してみたが、圭一は「でも」「だって」と、頑なに考えを変えようとはしなかった。
圭一は普段、真子の言うことにきちんと耳を傾けてくれるので、聞く耳も持たずに否定されたことが、何よりも悲しかった。
その日、真子は圭一と初めて大きな喧嘩をしたのだった。
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数日後。大学時代のサークル仲間と久しぶりに『TRUNK KITCHEN』で集まった。圭一のことで落ち込んでいた真子には気晴らしとなり、楽しい時間を過ごした。
会が始まって1時間ほどして、先輩が店に入って来たある男性に声をかけた。
「お、俊!久しぶりだな。お前、日本に帰ってたんだな」
その声に、まさかと思い顔を上げる。
…そこには、別れてから幾度となく夢にまでみた、宮崎俊の姿があった。
NEXT▶5月16日更新予定
忘れられなかった元彼の俊に会った真子は…?
真子がチェックした「アールイズ・ウエディング」のインスタグラムはこちらから>>
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