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  • 二人の間で揺れる花嫁 Vol.1

    二人の間で揺れる花嫁:彼からのプロポーズに幸せいっぱいだったのに…。花嫁を惑わせる男の出現

    その思い出の正体は、宮崎俊。

    圭一と同じ32歳で、真子の元彼だ。

    俊は真子と同じ早稲田大学出身で、テニスサークルの先輩だった。圭一とは見た目も性格も正反対で、身長182センチの筋肉質な体形に整った顔立ちをしている。何事にも豪快で男らしく、誰とでもすぐに友達になるような社交的な男だった。

    そんな彼とのデートはいつも情熱的で、真子の知らない素敵なレストランに連れて行ってくれては、いつも小さなサプライズを用意してくれていた。

    その一つが、記念日や誕生日、クリスマスなど事あるごとに贈られるバラの花束だった。

    「うん、真子はやっぱり、赤いバラって感じ」

    そう言って俊は満足そうに頷いたが、真子は恥ずかしくて目を合わせられなかった。恋愛には淡白なほうだと自覚していた真子だったが、俊といるときは少し不安定で、恋する女そのものだったと思う。

    しかし、2年半ほど付き合った俊との終わりは、突然やってきた。

    「真子、俺、アメリカの院に行こうと思う」

    もともと帰国子女だった彼は、もう一度アメリカで挑戦したい、という思いが強かったのだ。

    「え……。院って…?いつまで?仕事はどうするの…?」

    予想していなかった告白に、真子はひどく動揺した。しかし、俊の意思は固かった。

    「院自体は2年だけど、その後は向こうで就職したいと思っている。俺の就職が決まったら、真子にもアメリカに来て欲しい」

    2年も先の不確定な話…。しかもせっかく仕事も楽しくなってきたタイミングだったので、会社を辞めてついて行くなんて考えられなかった。

    真子はさんざん悩んだ末、別れを決意した。

    俊と最後に会って別れた後、真子は人目も憚らずに道端でうずくまり、涙を流した。

    あの日握った大きな彼の手の温かさを、今もなお忘れられずにいたのだった。



    「嘘!?プロポーズされたの?おめでとー!!」

    『ザ・ロビーラウンジ』で、真子は大学時代の友人である陽子に報告していた。

    「ありがとう。突然だったからびっくりしたけど…」

    「そっか、良かったね。真子もやっと俊くんのこと、吹っ切れたんだね」

    ―“シュンくん”。

    陽子の発したその単語に、真子は曖昧に微笑んだ。同じ大学なので、陽子はもちろん俊のことも知っている。

    「確かに俊君はカッコよかったけど…。でも、圭一さんいいじゃん。絶対いい旦那さんになるよ」

    「うん、そうね」

    自分が必死でしまい込んでいた俊への気持ちを見抜かれないよう、真子はにっこり笑った。

    「本当良かったね。それで、結婚式はいつするの?」

    「実は、今お互いに忙しくて、まだ話せていないの。でも、式はしたいと思ってる」

    しかし真子は結婚式自体に、はっきりした願望はなかった。

    「どういう式にしたいの? 」

    「そうだなぁ…。ゴージャスな“ザ・日本の結婚式”っていうのはしたくないんだよね。人を大勢呼ぶから、両親とも会話できないだろうし、来てくれた人にちゃんとおもてなしできなそうで」

    「そっか。たしかに圭一さんとは同じ会社だから、会社の人を呼ぶと結構人数増えるしね。皆と話す時間が取れなさそう」

    陽子の言う通り、社内結婚なので、どこで線引きをするのかが難しいのだ。

    「だったら、海外ウエディングは?私1回招待されて行ったんだけど、アットホームな式で良かったなぁ。その子の親とか、新郎の友だちとも仲良くなったし」

    陽子からの提案に、真子は、いいかもしれないと思った。



    帰ってから、真子はインスタグラムを開き、「#海外ウエディング」で検索してみた。


    様々な写真が並ぶ中、少し恥ずかしそうに、でも心から幸せそうに笑う新郎新婦の写真が目に留まった。

    「ふふっ…。可愛い」

    そう思いながらいくつかの写真を開いていくなかで、一枚の写真が目に入った。

    それは白を基調としたモダンで美しい内装に、青い空と海が広がり、息をのむほど美しいチャペルだった。

    ―素敵…。モアナチャペル…?これ、どこだろう?

    ハッシュタグを見ると、#HAWAII#arluisweddingと書いてある。その写真を見て、真子はピンときた。

    ―ハワイなら圭一も大好きだし、ここなら素敵な式ができるかも。

    真子は「#arluiswedding」のインスタグラムを、何件もさかのぼってみた。

    2人で行ったことはないが、圭一は幼いころ毎年家族でハワイ旅行をしていたらしい。これなら圭一も喜んでくれそうだと、真子はウキウキした気持ちになり、アールイズ・ウエディングのHPで情報収集を始めた。

    アールイズウェディング①PC

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