主婦らしい柔らかなオーラを醸し出しながらも芯のしっかりした印象を受けるのは、家庭と仕事のバランスをうまく取っている証だろう。
「この仕事も、実は夫に勧められたんですよね。お金を稼ぐんじゃなくて、何かしら“外”と繋がりがあった方がいいよって」
そんな桃子の口調からは、夫への愛情がチラリと垣間見えた気がした。
愛するがゆえ?愛犬家たちの“ペットマウンティング”とは
愛犬と戯れながら、日々ゆったりと時間を過ごしているように見える桃子。
おっとりとした彼女の話を聞いていると、婚活戦争やら夫婦バトル、または女同士のマウンティングという都心に蔓延るギスギスした人間関係とは無縁に思える。
「うーん...昔はそういうのもあったかもしれません。でも、今はほとんど犬としか過ごしてないから。あっ、でも...たまに“ペットマウンティング”はされるかも...」
桃子はこのとき初めて、ほんの少しだけ顔を歪めた。
この界隈には彼女と同じようなペット連れの主婦が多い。お散歩などでちょっと立ち話となると、特に小型犬の飼い主で、危険人物に遭遇することがあるという。
「トイプードルって飼いやすくて人気な分、大きさや色、顔立ちもピンキリ。今トイプー界で人気なのは、いわゆる“ティーカップ”と呼ばれる、とにかく小さい子なんです」
その“ティーカッププードル”とやらの定義とは、体重2kg以下の極小犬を指すらしい。桃子の犬も体重1.5kgでその基準を余裕で満たすらしいが、それ以外にも愛犬家たちの目は厳しく光る。
「“小さくて可愛い子ね。でも、ちょっと足が長いのが残念ね”って言われたことがあります。知ってます?可愛いプードル条件。
体重はもちろんですけど、足が短い、マズルが短い、首が短い、体長が短い、体高が低い、お顔のパーツが中央に詰まってる、耳が上に付いてる...とか、たくさんあるんですよ」
そして、そんな黄金比を満たすプードルは、200万円以上の金額がつけられることもあるという。要は、“ペットの可愛さ=財力”となるがゆえ、ペットマウンティングが勃発するのであろう。
「犬をやたら可愛がる人って子どもがいない人が多いから、愛情が歪みがちなんでしょうね。え?ウチ?うーん...私はナナで充分かな。夫は子ども欲しいみたいですけど...」
そう言って大きな笑い声を立てた桃子からは、他意は感じられない。稼ぐ夫とペット1匹の気楽で裕福な暮らしに、恐らく本当に不満はないのだ。
「ウチの旦那?何年か前に独立して、投資とか色々してるみたい。うーん、でも実際何の仕事してるのか、私あんまり知らないんです。一生懸命働いてくれてるから、いいかなって」
天真爛漫という言葉がピッタリな桃子。年上の夫を尻に敷いて要領よく暮らしているのは明らかだった。
素直に「幸せな人生ですね」と納得してしまうのは、彼女の天性の愛嬌によるものか。あるいは、それが子無しセレブ妻の巧妙な処世術なのか、うまく判断がつかない。
だが、“裕福な犬連れ妻”ほど麻布十番という街を象徴する人種は他にはいないだろう。
▶NEXT:4月28日 土曜更新予定
十番在住・イケてるオジサン。一見「ちょいワル」な彼の可愛い本性とは?
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この記事へのコメント
豆柴然りですけど。地道にスタンダードを追求して健全な犬を後世に引...続きを見るき継いで行こうとしているブリーダーもいれば、「生まれたものを何でもいいから高く売ろう」という浅ましい人間も多い業界です。
何よりティーカップが売れることで、虚弱同士でもいいからかけてもっと小さい犬を作ろうという動きも出ています。犬が可哀想です。