
~「引きこもり」からマンハッタンへ。モノの真価を世界に届けたい~
2020年のニューリーダーたちに告ぐ
高い技術力がありながら、国際競争力を失って久しい日本のものづくり。そこへアートの世界から飛び込んだ鶴本晶子氏は、再生のためには“ブランド化”が欠かせないと、日本の伝統と最新技術を掛け合わせた唯一無二のプロダクトを生み出し、世界に向けて発信している。
それまでニューヨークと東京を拠点に、アートディレクターとして活躍していた鶴本氏が、なぜ日本の伝統工芸に魅せられたのか? そこには、日本で唯一残った魔法瓶工場との出逢いがあった。
「日本の素晴らしいものづくりを、世界に通用するブランドに育てたい」と日々奮闘する鶴本氏から、次世代のリーダーたちは何を学び取ればいいだろうか。
金丸:本日は新進気鋭のブランド、NAGAE+(ナガエプリュス)でブランドディレクターを務めている鶴本晶子さんをお招きしました。お忙しいところありがとうございます。
鶴本:お招きいただき光栄です。こちらこそよろしくお願いします。
金丸:今日の対談の舞台は、歌舞伎座からほど近い、割烹料理店の『銀座くどう』です。一日3組限定という、落ち着いた空間でお料理をお楽しみいただけたらと思います。
鶴本:ありがとうございます。すごく楽しみです。
金丸:ナガエプリュスの母体は、60年以上の歴史を持つ金属加工メーカーだそうですね。
鶴本:はい。富山県の高岡市にある株式会社ナガエという金属鋳造のメーカーです。ダイカストという高度な技術を使って、インテリア雑貨や美術工芸品、建築金物や工業部品などを幅広く製造しています。
金丸:高岡といえば、高岡銅器をはじめ金属加工が盛んですよね。
鶴本:そうですね。江戸時代から金属製品を作り続けていて、今でも鋳物工場や金属加工メーカーが数多くあります。高岡に脈々と続く奥ゆかしい美と長年ナガエで培ってきた工業技術を結実したブランドが、ナガエプリュスなんです。
金丸:いつ立ち上げたんですか?
鶴本:2015年です。伝統的な技に最先端技術を掛け合わせたデザイン性の高いプロダクトを世の中に送り出そうと、商品開発から製造管理、流通開発までトータルでブランディングを手掛けています。今身につけているこのブレスレットも、ナガエプリュスの商品なんです。仏具の金メッキの加工技術を使って、素材の錫に24金のメッキをほどこしました。
金丸:ブレスレットにしては太めで、存在感がありますね。
鶴本:錫でできているので、形も自在に変えられるんですよ。外す時も、こうして広げればいいだけ。
金丸:なるほど。これは便利だ。
鶴本:実はこのブレスレット、昨年11月にトランプ大統領夫妻が来日された際、安倍首相夫妻に贈り物として選んでいただきました。
金丸:では、メラニア夫人も身につけていらっしゃるんですね。
鶴本:ありがたいお話です。