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  • バツイチ男の恋愛事情 Vol.4

    バツイチ男の恋愛事情:誘惑か、それとも…?バーでよく会う美女に、かき乱される男の本音

    「どうぞ」

    田崎にグラスを差し出されて藤本はハッと我に返る。無意識に入り口のドアを見つめていた自分に気づいて、口元を緩めた。

    綾子は、この2ヶ月ほどの間に、この店でよく見かけるようになった女性だ。

    年齢はおそらく30歳前後。すらりと背が高く、いつも上品な膝丈のタイトスカートを履いている。

    彼女が一人でいるところを見たことはなく、いつも女性同士で来ていた。

    連れの女性から「綾子」と呼ばれているのを聞いて、彼女の名前を知っただけで、彼女と話したことは一度もなかった。つい、先週までは。

    先週、綾子の連れの女性が少々飲み過ぎたようで、帰り際にカウンターに座る藤本にぐらりと寄りかかるようにぶつかってきた。

    「ヤダ、ちょっとしっかりしてよ!」

    綾子は連れの女性に向かって言うと、藤本に向き直り「ごめんなさい」とぺこりと頭を下げて、そのまま店の外へと出た。

    その5分後、綾子は一人で店に戻ってきて、空いていた藤本の隣の椅子に、まるで当たり前のように座ったのだ。

    「さっきはすみませんでした。彼女はタクシーで帰りましたが、私ぜんぜん飲み足りないので、1杯だけご一緒させていただいてもいいですか?」

    自分に自信のある女性特有の、凛とした表情。威圧感や押し付けがましさは一切なく、するりと人の懐に入るような人懐っこさが彼女にあった。

    「ええ、どうぞ」

    藤本がそう答えた時には、綾子はすでに藤本の隣に座っていた。


    「こちらには、よくいらしてますよね?」

    藤本が言おうと思っていた言葉を、彼女から先に言われた。そんな会話から互いに名乗り合い、簡単な自己紹介をしたのだ。

    藤本は昔から、声の綺麗な女性が好きだった。

    声の出し方にはその人の育ちが滲み出るような気がして、繊細だが意志のある声を出す綾子に、藤本は久しぶりに心が浮き立つのだった。

    照明が落とされた店内。藤本と綾子の間には、ペットボトル1本分の距離しか空いてない。

    この日、会社を出る前にいつものように『Kunkun body』でワキや耳の後ろのニオイをチェックして良かった、などと、普段はあまり思わないようなことまで考えるほど、藤本は久しぶりに心の昂ぶりを感じた。

    だが綾子は、最初に言った通りモヒートを1杯だけ飲むと、「またお会いできるのを楽しみにしてます」と、品の良い笑顔を残して藤本の前から去ったのだった。

    彼女が、どうしてわざわざ一人で店に戻ってきたのか、藤本にはわからない。本当に、1杯だけお酒を飲みたかっただけなのか、それとも…?

    それから1週間が経つが、その夜以来綾子の姿を見ていない。気がつけばこの1週間、藤本は綾子のことばかりを考えていた。

    今夜も会えないのだろうと半ば諦めながら、1杯目のウィスキーを飲み切ろうとしていた時、

    「藤本さん」

    不意に後ろから名前を呼ばれた。

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