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大阪アンビシャス Vol.1

大阪アンビシャス:商社マンには勝たれへん?“面白い”だけのモテ男が受けた、社会人3週間目の洗礼


「あるある!商社のヤツらだろ?アイツら、めっちゃ偉そうやからなあ」

翌日の昼休憩で、先輩に昨晩の出来事を愚痴ると、先輩たちは半ば諦めた顔つきで頷いた。

「悔しくないんっすか?」

俺は納得がいかずに尋ねるが、先輩たちは揃いも揃って、首を傾げるのである。

「まぁ、昔は悔しかったけど…。もう慣れたというか…」
「なんやかんや、ここまで来たしなぁ…」
「嫁が転職、許してくれへんねん。ここも給料はいいし…」

—なんてネガティブなんだ…。

しかし俺は、諦めきれない。社会人早々、出鼻をくじかれまくったが、このまま先輩のように人生を進むのだけはごめんだ。なにか、一発逆転できる方法はないものだろうか?

そんなことばかりを悶々と考えていた。


一方で、プライベートの方も、順調とは言い難かった。

今日はナナコちゃんと、2人で食事。俺が彼女を気に入っている事もあったが、商社マン圭祐に負けたくなかったという理由も大きい。何度か誘い、ようやく2人での食事にこぎつけたのだ。

社会人らしく和食のお店をと『魚匠 銀平』を予約したが、ここでも圭祐を意識しない訳ではない。

あいつはどんなお店に女の子を連れて行っているのだろうか?そんなことが気になってモヤモヤする。

ナナコちゃんは今日も綺麗だ。ツヤツヤでストレートのロングヘア―は何度見てもうっとりする。

サックサクの天ぷらに舌鼓を打ちつつ、俺はナナコちゃんをどうにかして笑わせようと、必死になっていた。

「このキスの天ぷら、めっちゃ美味しいなぁ。今釣ってきたんかなぁ?」

しかし彼女は、俺の話には耳も傾けず、遠くを見つめながらため息をはく。

「圭祐さん、お仕事が忙しいみたいで…さすが商社マンやわぁ…」

ここでも商社マンの持ち上げが甚だしい。

どうやら、圭祐とメッセージのやり取りはしているものの、2人での食事にはまだ行っていないらしい。

だが残念なことに、俺は圭祐とはアレからも食事会で何度か顔を合わせている。「脈が無いんじゃない?」という言葉は、ぐっと飲みこんだ。

―圭祐が本気にならない女の子に夢中になってる俺って…。

何だか自分の思考が、圭祐への嫉妬でいっぱいになっている事に気付きつつ、このドロッとした感情を追い払うことができなかった。



それからさんざん悩み抜いて俺が出した答え、それは転職だった。

3年間は転職してはいけない、なんてまことしやかな噂があるが、その反面3年間は第2新卒という扱いがあるという。

限られた第2新卒枠を掴むためには、今の仕事で成果を出そう。職務経歴書に書ける実績を作る為に、とにかく仕事をしまくるのだ。

そして、俺は心に誓った。

—転職して、商社マンになってやる。

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。



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この記事へのコメント

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No Name
この女、最悪じゃん。こんな女にチヤホヤされたいって理由だけで転職決意するの?男って本当に謎…
2018/03/08 05:5499+Comment Icon6
No Name
女性を理由に転職だなんてダサすぎる。仕事のやりがいで選べば良いのに。
2018/03/08 06:1299+Comment Icon15
No Name
さっきの慶一とは真逆の男だね笑
2018/03/08 06:2454
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大阪アンビシャス

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