ミナミちゃんの恋人 Vol.4

愛する彼の“山の手シティボーイ”への劣等感。マテリアルガールだった女に芽生えた、妻になる決意

―どうして私が、こんな辺鄙な土地に住むの...?―

幸せな家庭を築くことを夢見て、コツコツと女としての人生の駒を進めてきた大手航空会社CAの美波(ミナミ)、27歳。

ルックス・収入・性格とともに完璧な港区男子・孝太郎と出会い、順調に婚約まで済ませた、まさに幸せの絶頂期。

「浅草に住もう」という提案に戸惑う美波だが、さらに彼の友人から「孝太郎は“下町の成り上がり”」と忠告を受ける。

そして、浅草で育った孝太郎の素顔が少しずつ明かされるが...?


「今日来て、孝太郎くんが浅草を好きな理由、分かってきたわ」

“浅草に住みたい理由を聞いてくれ”と言いながら、なかなか話を切り出そうとしない孝太郎に、美波は優しく声をかけた。

「私は江戸っ子の孝太郎くんも好きよ。地元が落ち着く気持ちもよく分かったし...」

シンと静まり返った夜の隅田川のほとりを歩きながら、美波はスウェット姿の孝太郎の腕にピタリとしがみつく。

いつもファッション誌のモデルのようにスタイリッシュな服を着こなす彼を素敵だと思っていたが、こんなラフな姿だってワイルドでカッコイイ。

そういえば、高校生の頃に男子校の文化祭なんかに出かけたときは、制服をダボッと着崩し、髪を明るく染めたちょっと悪そうな男子にドキドキしたこともあった。

今の孝太郎に抱くのは、ちょうどそんな感覚に似ている。

冬の冷たい空気と、大きな川独特の水っぽい香り。

川の向こうの澄んだ空にはスカイツリーとアサヒビールのオブジェがくっきりとした光を放ってそびえ立ち、それが水面に綺麗に反射する浅草の夜景は、文句なしに美しかった。

もしも高校生の頃、この街に住み、“御三家”の進学校で浮いていたという孝太郎に出会ったとしても、絶対に今と同じように恋に落ちる。美波にはそんな確信すら生まれた。

「地元愛とか、生まれ育った街が落ち着くとか......もちろん、そんな気持ちもある。でも...」

孝太郎は寂しげに微笑みながら、重々しく口を開く。

「正直、浅草にいたいって思うのは、そんな綺麗な理由だけじゃねぇんだ」

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