人事部は見た! Vol.9

人事部は見た!:やたらと羽振りが良い男への疑惑。経費を私的利用していた男が失墜する日

人事部ー。

社内の人間模様や、人間の黒い欲望に直接触れることもある部署。

人事部から見た社内、それは人の業が蠢く社会の縮図であった。

涼子が働く恵比寿のベンチャー企業では、管理本部長・坂上の社内システム入れ替えのミスを、総務課長・後藤になすり付ける、黒い思惑にまみれた人事異動が発表された。

涼子は、同期の誠に相談しつつ、社長に直接要請しシステム入れ替えの大きな一歩を進めたが、涼子の本当の画策はこれからであった。


システム入れ替えは、システム部門からの人員追加もあり、ほどなくして、一部の機能が先行して稼働し始めた。

稼働してもなお、バグや修正箇所が見つかるだろうからと、一気に入れ替えることはせず、稼働できる部分から少しずつ稼働させるといった方針は、どうやら社長とエンジニアで決めたようだ。

さすが社長やエンジニアが入ると違うな、と涼子も同僚たちも思っていた。

これで総務部は、システム入れ替えの功績を独り占めできなくなった。むしろ、今まで総務部は何をしていたんだという空気すら社内に漂い始めていた。



「話って何だね。私は忙しいんだが。」

涼子は会議室で坂上さんと向かい合っていた。

坂上さんに、「ちょっと面白い情報があるので、ご共有させて下さい」とメールを送っていたのだ。

面白い情報、というと坂上さんは絶対食いつくに違いない。涼子はそう踏んでいた。

予想通り坂上さんの心を掴んだようで、メールで送っていた時間に涼子が会議室に行くと、すでに坂上さんが座っていた。

机の上にはスマホが置かれているが、坂上さんはスマホを見るでもなく、腕を組んで窓の外を見ていた。

「失礼します。」

涼子はそう言って、坂上さんに向き合う。

「お忙しいところ、お待たせして申し訳ございません。坂上さんにどうしても見て頂きたいものがございまして。」

涼子は、とある書類を坂上さんに渡す。

その書類に目を通した坂上さんの表情は歪み、どんどん険しい顔になっていった。

渡した書類、それはとある領収書のコピーであった。

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