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  • バツイチ男の恋愛事情 Vol.1

    バツイチ男の恋愛事情:5年越しの再会で見えた、彼女の本性。意図的にボディタッチしてくる女

    藤本の結婚生活は、2年で終わりを迎えた。

    元妻は、美しいものが好きだった。高級なもの、上質なもの。それらを身の回りに置くのが好きで、そこへの支出は厭わなかった。

    離婚の理由は、一言で言うとありきたりだが「価値観の違い」だ。

    夫婦の価値観というのは、端的に言うと「何にお金をかけるか」だと藤本は知った。

    藤本だって上質なものを揃えることは賛成だ。ただ彼女のそれは、やや過剰に見えた。彼女は必要以上に着飾り、藤本がそれに口を出すと烈火のごとく怒るのだ。

    結婚前は穏やかだった彼女が、結婚してからは般若のごとき顔をするようになり、そんな彼女と一緒にいることがつらくなって、藤本から別れを切り出した。

    今になって思えば、お金の使い方は大きな理由ではないのかもしれない。ちょっとしたことですぐに怒ってしまう彼女と一緒にいる理由が、わからなくなってしまったのだ。

    現在の藤本は、神谷町駅から5分ほどのタワーマンションに住み、マンションの最上階にあるプールから朝日に照らされた東京タワーを眺めながらひと泳ぎするのが、毎朝の楽しみだ。

    私生活が破たんしても、仕事は順調だった。

    36歳の時に、外資系投資銀行を辞めて立ち上げた不動産関連の会社は順調に業績を伸ばしている。

    休日には愛車のAudiで千葉まで行ってサーフィンをすることもあれば、仲間たちを自宅に呼んで簡単なパーティーを開くこともある。

    バツイチ男の一人暮らしは、思っていた以上に心地良かった。

    「40歳を過ぎて一度も結婚したことがない人は、逆に警戒しちゃうよね…」と女性たちからヒソヒソと言われることもない。

    「逆にバツイチの方が安心感がある」と言われることが多く、実際に女性から誘われることも少なくない。

    その現実には驚いたが、藤本自身、今は特定の誰かと付き合うつもりはない。その一歩引いた感じが、女性にはまた良い印象を与えるらしい。



    ある日の夕方。長い会議を終えてちらりと腕時計を見ると、時間はもう18時半を過ぎていた。

    ―あと20分か…

    今夜は食事会の約束が入っており、白金台で19時スタートだ。一度自宅に帰ってシャワーを浴びたかったが、もうそんな余裕はない。

    「じゃあ、お先に」

    藤本はカバンと上着を掴み、残っている社員に声をかけながらお手洗いへと向かった。

    まずは手を洗い、鏡の前に立って顔の油をさっと取る。その後は髪を整え、最後にカバンから取り出した『Kunkun body』をワキにかざしてニオイのチェックも欠かさない。


    スマホに表示された結果を確認し、小さくひとつ咳払いするともう一度、鏡に映る自分を確かめた。

    藤本は、大事な会議や会食、食事会などで、人と会う前にはこうして鏡の前に立って身だしなみを整えることを欠かさない。

    それはもちろん、人に不快感を与えないためでもあるし、自分のためでもある。

    万全の準備を整えておくことで、不要な心配がなくなり自信を持つことができる。さらに、相手にどんな印象を与えるかで、ビジネスもプライベートもその結果は大きく変わる。

    特に女性は、身だしなみに対して厳しい目を持っているもの。女性というのはナチュラルに視覚、聴覚、触角、嗅覚、そのすべてをフルに働かせて男たちを査定する。

    彼女たちは特別何かを意識しているわけではない。本能でそうしているだけ。だが本能だからこそ、女たちはとにかくそういったものに敏感なのである。



    「すみません、遅くなりました」

    指定された店に入り案内されたテーブルに行くと、そこにいた一人の女性に藤本の目はくぎ付けになった。

    「まさか、藤本さん…?」

    藤本が、目の前の女性を見て言葉を出せずにいると、彼女の方からそう声をかけてきた。

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