天現寺ウォーズ Vol.3

慶應幼稚舎の校章は、6歳で得る“特権階級”の証。コネも権力ない元CA妻に、勝機はあるのか?

あなたは、知っているだろうか。

東京の勝ち組女である“港区妻”に、実は純然たる階級があることを。

その頂点に君臨するのは、生まれ育った東京で幸せに暮らす、生粋の「東京女」である。

一方でたった一人で上京し、港区妻の仲間入りを果たした女たちもいる。元CAで専業主婦の桜井あかりも、その一人。

東京女を相手にあかりが挑むのは、港区妻究極の戦い。それは、慶應幼稚舎受験であった。

CA仲間だった東京出身の玲奈と百合が実は着々とお受験も準備をしていると知り、地方出身の自分との格差を感じるあかり

信頼する友達・凛子から、慶應幼稚舎の魅力をきき、さらに話をきくために紹介された個人の幼児教室を訪れる。

そこで現れた美貌の教師、北条ミキに、幼稚舎受験を勧められるが―。


天現寺の歩道橋を渡ると、幼稚舎の子どもたちとたくさんすれ違う。

6歳にして“特権階級”に所属する証である、ランドセルに刻まれた慶應の校章。

最高に恵まれたこの子たちは、どのように選ばれたのだろう?そしてその可能性がもし、自分の子どもに1%でもあると分かったら…?

帰り道、ふわふわした足取りで帰りながら、あかりは北条ミキの言葉を思い出していた。



「正直言って、旬くんが幼稚舎受験の土俵に乗るのは難しいです」

両親ともに幼稚舎出身ではなく、コネもない。やはりそうか…と肩を落としていると、北条ミキはこう続けた。

「…しかしそれは、あくまで身上書からの判断です」

次に発せられる一言が、気になってしかたない。あかりは北条ミキをまっすぐ見つめ、ゴクリと喉を鳴らした。

「旬君は、化けるかもしれません。この世界に25年いる私から見て、彼は必要な要素を持っています。

目千両、俊敏、器用。そして……オーラがある子」

旬は他の子より目立つほうだとは思っていたが、しょせんは親の欲目だと思っていた。あかりの胸は一気に高鳴る。

そして、北条ミキはこう言い切った。

「慶應幼稚舎は、あなどれない学校なんです。お金とコネありきだと思われがちですが、本当に力のある子は決して見逃さない」

かすかに感じていた“可能性”という希望の光が、北条ミキの一言ひとことによって、徐々に輪郭を帯びていく。

「もう時間がありません。いちかばちかの覚悟があるならば、旬くんに賭けてみませんか?ご家族でも、よく話し合ってみてください」

北条ミキの言葉に、あかりは深くうなずいた。大学受験で慶應を受けたときも、航空会社を受けたときも、こんな気持だった。

―途中で挫折するかもしれない。…でもやらなかったら、きっと後悔する。

何も知らないからこそできる無謀な挑戦というものがあることを、あかりはこれまでの経験からよく分かっていたのだ。

今日帰ったらさっそく修司に相談してみようと、心に決めていた。

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