金より愛子 Vol.7

「必死で働いて、何が悪いの…?」悲劇の代理店女子と一生働く必要のない医者妻。10年越しの友情の亀裂

結婚に必要なのは、お金or愛?

それは、女にとって永遠のテーマである。

“最後は愛が勝つ”と信じたくてもそれは理想論だということに、女たちは徐々に気づいていくのだ。

しかし「お金より愛が勝つ」と言い切る、ある女がいた。

その名は、愛子。

金に目がない女だらけの東京において、愛子は信念を貫き、幸せな結婚生活を勝ちとれるのか?

広告代理店で働く29歳の愛子は、大手通信会社勤務の知樹と結婚を決め、幸せな毎日を過ごしていた。愛子は見事プロジェクトリーダーに抜擢され、取引先の変わり者御曹司・翔太と知り合う。

一方、同時期に医者との結婚を決めた親友の明日香は、結婚式で愛子との絶対的な差を見せつけることを心に誓っていた。


「えっ…?プロジェクトが白紙ですか…?」

愛子は、広々とした会議室の隅に、呆然と立ち尽くしていた。

朝一番に愛子を呼び出した上司の顔つきがいつもと違い、違和感を感じていたのだが、嫌な予感は見事的中した。

愛子がプロジェクトリーダーとして指揮をとっていた、Instagramを利用した携帯電話会社のプロモーションが、クライアントの意思により急遽中止になったというのだ。

「どういうことですか?先方もあんなに乗り気だったのに…!」

愛子が焦って尋ねると、上司は肩をすくめた。

「クライアントの上層部の決定だから、俺たちにはどうしようもできないんだよ。申し訳ない」

上司は、プロジェクトの予算が大幅に削られることになったのが原因だと説明したが、あまりに急な出来事で、愛子はどうしても納得ができない。


—一体、何があったというの…?


特に、キャンペーンの目玉企画として、ナッシェンとコラボしてSNS映えするスイーツを制作するアイディアは、愛子の上司にはもちろん、クライアント側にもかなり好評だった。

先方のチームリーダーはかなり手強い女性で、彼女からの細かすぎる要望や二転三転する変更にも愛子はきめ細やかに対応していた。その甲斐あって、企画は順調に進行していたはずなのに。

なんとか気持ちを落ち着けてから、チームメンバーに報告をすると、営業事務の女性は真っ先に動揺をあらわにした。

「あの苦労が…!全て無駄になったってことですか?」

彼女は唇を噛み締め、目にはうっすら涙まで溜めている。

「皆には、本当に申し訳ないと思ってるわ。でもきっと必ずまたチャンスがあるから、それを信じて頑張ろう。その時も、どうかよろしくお願いします」

頭をさげた愛子を、彼女は恨めしそうな目つきで見返した。

「…愛子さんって、プロジェクトが潰されても顔色ひとつ変えないなんて、本当にたくましいんですね。私は、そんな簡単に割り切れないです」

何も言い返すことが出来なかったが、一番泣きたいのは当然、愛子自身だ。ようやく手にしたプロジェクトリーダーの座も、睡眠時間を削って必死に髪を振り乱してきたここ数ヶ月の努力も、一瞬にして水の泡となったのだから。

本音を言えば、今すぐトイレにでも駆け込んで声をあげて泣きたいくらいだが、笑顔を取り繕って彼女をなんとか慰めるのだった。

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