結婚に必要なのは、お金or愛?
それは、女にとって永遠のテーマである。
“最後は愛が勝つ”と信じたくてもそれは理想論だということに、女たちは徐々に気づいていくのだ。
しかし「お金より愛が勝つ」と言い切る、ある女がいた。
その名は、愛子。
金に目がない女だらけの東京において、愛子は信念を貫き、幸せな結婚生活を勝ちとれるのか?
子供の頃、冗談まじりで遊んだゲームに、「究極の選択」という遊びがあった。
“お金か愛、ひとつだけ選ぶならどっち?”
その質問に、愛子はこれまで迷うことなく答えてきた。「お金より、愛」だと—。
◆
「お帰り。ちょうどご飯、できたところだよ」
残業が終わり家に帰ると、恋人である知樹の声が、お湯を沸かす音と共にキッチンから聞こえてきた。
愛子は、29歳になるまで、恋人や結婚相手の条件に「年収」を求めたことが一度もない。
しかし周りの女たちは、そうではなかった。たとえば愛子の親友・明日香は、大学生の頃から、日吉キャンパスに溢れかえる男子学生たちには目もくれず、マスコミに就職した先輩や商社マンとの食事会にばかり繰り出していた。
「同い年の男なんて、お金も車もないじゃない」
それが明日香の口癖だった。
その頃巷ではバレンシアガのバッグが大流行していて、ある日、明日香がバレンシアガを持って大学に現れた。社会人の彼氏におねだりして買ってもらったのだという。周りの女の子たちも続々と、親に同じバッグを買ってもらった。
愛子が母親に「みんなバレンシアガ持ってるのに、私だけ持ってないの」とぼやくと、翌日、母が愛子に持ってきたのはカバンではなく、知人の会社のバイトの求人だった。
「愛子、欲しいものがあるなら自分で稼いで買いなさい。自分で努力して手に入れた物の方が何倍も価値があるわよ」
母はそう言って、豪快に笑った。
そんな母のおかげだろうか。愛子には学生の頃から、お金は自分で稼ぐものだという考えが当然のように根付いていた。大学卒業後は、大手広告代理店へ就職した。
愛子の恋人・知樹は、同じ大学を卒業し、国内最大手の通信会社で働いている。知樹の趣味は料理で、その腕前はプロも顔負けだ。一緒に暮らすようになってから、夕食を作るのは知樹で、週末にまとめて掃除をするのが愛子の役目だった。
その日知樹が作った、愛子好みに味付けされた激辛の麻婆豆腐を食べながら、何気なく呟いた。
「私、これからもずーっと、トモくんのお料理食べたいなあ」
すると知樹は笑って言った。
「明日もあさっても、おばあちゃんになっても毎日食べられるよ」
愛子がきょとんとした顔をすると、知樹は続けてこう言ったのだ。
「俺たち、そろそろ結婚しようか」
この記事へのコメント
主人公はまともだと思うけど、彼女の能力や容姿、経済力のレベルだからこそ「金より愛」と言える部分はあるのかな。そうだとしても、男性への寄生根性逞しい女性読者をあっと言わせてほしいです笑。