高学歴・高収入・男性に引けを取らない仕事への情熱。
都内の高級エリアに住み、欲しいものは何でも自分で買うことが出来、食事は本当に美味しいものしか食べたくない。
にゃんにゃんOLのように自分の生活を誰かに変えてもらおうと、必死で結婚相手を探す必要もない。
そんな無敵のような女に訪れた苦難。あなたは、どう感じるだろうか?
日系の証券会社で働く湯川可奈子(34歳)は、まさにそんな女性の一人だった。そんな可奈子が理想通りの結婚を実現したが、その先はキャリアと子供に悩まされることになるのだった…。
海外赴任の辞令は突然に
「湯川。実は、来週の人事異動で湯川のNYへの異動辞令が出ることになった。」
その言葉を聞いた可奈子は、ビックリしすぎて一瞬事態が飲み込めなかった。
「え、私がNYですか?」
「うん、そう。ずっと海外に行きたいって希望していただろう。湯川にはいつも人一倍働いて貰ってるし、次の海外駐在員の派遣がある時には送りたいと推薦してたんだ。」
「そうだったんですか…。それは、どうもありがとうございます…」
確かに可奈子は、ずっと海外異動を希望していた。だけどそれは結婚する前の話だ。今になって、そんな辞令がでるなんて…。
可奈子は、夫の清(きよし)の顔を思い浮かべると、すぐに返事ができずに固まってしまった。
大学卒業後から日系の証券会社で働いている可奈子は、投資銀行部門で、忙しくも充実した日々を送っている。あるディールで知り合った、会計のグローバルファームに勤務する清と結婚したからだ。
6歳年上の清は優しくて包容力があり、仕事熱心な可奈子をいつも応援してくれている。お互い忙しい中時間を作り、仕事帰りに待ち合わせて食事をしたり、毎週のように週末旅行をしたりと、可奈子は今が一番幸せと言い切れるほどだ。
そんなある日、可奈子がいつものようにオフィスで黙々と仕事をしていると、上司の橘からランチに誘われた。
橘は3年前に外資系の大手金融機関から転職してきた直属の上司で、鮮やかな仕事ぶりや外資系企業独特の感覚が可奈子にとっては新鮮で、日頃から信頼を寄せている。
その橘から、ブリックスクエアの『mikuni MARUNOUCHI』でスパークリングウォーターを飲んでいる時にNY赴任の話を切り出されたのだ。
以前の可奈子であれば、飛び跳ねて喜んでいただろう。だか、今はそんなタイミングではない。
すぐに返事が出来ず言葉に詰まる可奈子を見て、橘は言った。
「とは言っても、湯川も結婚したし、家族のこともあるだろうから、ちょっと相談してみてくれる?僕としては、行って貰ったらいいと思っている。だけど色んな事情で難しいようなら、それはそれで、湯川の意思を尊重するつもりだから。」
「ありがとうございます。主人と相談してみます。」
この記事へのコメント
最低限結婚前に話すことでは?
健康な子が生まれる保証もないし。
どこかで何かを諦めざるを得ない。
女性も男性も。
諦めた向こうに、得難い幸せがあるかどうか…
短時間で決めるにはおおごと過ぎる。