キャリアも幸せな結婚も、そして美貌も。
女が望む全てのものを手にし、したたかに生きる女たちがいる。
それは、東京の恋愛市場においてトップクラスに君臨する女子アナたちだ。
清純という仮面をかぶりながら、密かに野心を燃やす彼女たちは、現代における最強の“カマトト女”。
これは某キー局のアナウンス室で繰り広げられる、“カマトト狂騒曲”である。計算高い彼女たちはどうやって、全てのモノを手にしようとするのだろうか…?
「レミちゃん、今日の番組の衣装、すごく似合ってたねぇ♡」
収録終わり、にこやかに話しかけてきたのは、同期の橘花凛である。
「本当?嬉しい!私は花凛みたいに華がないから、せめて衣装は華やかな色にしないとね。」
花凛は、局の看板アナウンサーだ。サラサラなびくストレートヘアーに、スラリとした細くて真っ直ぐな脚。女の私でもため息が出るくらい、花凛は美しくて華がある。
「レミちゃんは親しみやすい雰囲気だから、そこが主婦ウケするってプロデューサーが言ってたわぁ。」
何の悪気もなくにっこり微笑む花凛に、ありがとうと言うべきなのか悩みながらも自分のデスクへ戻った。
私・田口レミは、26歳。入社4年のアナウンサーである。
周囲が言うように、当初私は報道向けの“地味枠”採用だった。それがたまたまプロデューサーの目に留まり、10時からの主婦向けの番組を担当させてもらえることになったのだ。
でも、私は知っている。
花凛がいる限り、私は絶対に1番になれない。
彼女は女子アナ界きっての、最強の「カマトトちゃん」なのだ。それが計算なのか天然なのか、私でさえ分からなくなるほど。
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