麗しの35歳 Vol.9

ついに明かされた、憧れの35歳女の裏の顔。年下男の揺れる想いと、元彼女の執念

女性の結婚率は、35歳を境に急激に下降する。

だがしかし、そんな悲観を抱くことは一切なく、麗しき独身人生を謳歌する女がいた。

恭子、35歳。

彼女が歩けば、男たちは羨望の眼差しで振り返り、女たちは嫉妬する。恭子は一体、何を考えているのか?

外資系ラグジュアリーブランドで働く恭子と、部下の周平。2人を引き離すため、周平の元彼女・瑠璃子は画策を練る。

その頃周平は、恭子とついに距離を縮めたことで、すっかり浮かれていた。


恭子さんが、確かに僕の腕の中にいた—。

六本木での夜の一件以来、僕は、まるでふわふわとした雲のうえにいるかのように夢見心地だった。

目を閉じると、恭子さんのカールした髪の柔らかい質感や、壊れそうなほどに華奢な肩を抱きしめたぬくもりが、この手にはっきりと蘇る。

あのとき、恭子さんは何を言おうとしたんだろう。

「周平君、私たち…」

彼女が何かを言いかけたそのとき、割って入るかのように僕の携帯電話が鳴った。妹からの着信だった。

「お兄ちゃん。急で悪いんだけど、今日、泊めてくれる?」

彼氏と大げんかして家を飛び出してきたと言う妹は、必死でなだめる僕の言うことには聞く耳を持たず、家の前で待ってるから、と言い残して一方的に電話を切っていった。

「私はいいから、妹さんのところ、行ってあげて」

事情を聞いた恭子さんはくすりと微笑んで、僕の手をそっと離した。

あのとき確実に、僕と恭子さんのあいだに漂っていた甘い空気。それを妹にぶち壊されていなければ…僕たちは、あの後どうしただろうか。

妹のことを恨めしく思いながらも、僕の頬は自然と緩む。

「周平さん、なに1人で笑ってるんですか?」

部下に尋ねられ、我に返る。おっといけない、今は仕事中だった。

転職して早三日がたとうとしている。新しい職場で、僕には初めての部下ができたのだ。

—僕も、恭子さんみたいに、部下から信頼してもらえる上司になるんだ。

気持ちを慌てて引き締めたが、ひとつだけ気がかりなことがある。あれから、恭子さんの連絡がないのだ。僕から送ったLINEにも既読スルーのまま。

「またすぐ、連絡するね」

そう言って名残惜しそうに僕の手をきゅっと握りしめた彼女。

僕が抜けた穴埋めのために、仕事がかなり忙しいのだろうか。そう思うと申し訳ない気持ちになった。

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