SPECIAL TALK Vol.36

~こんなに面白い時代に生きているのだから、新しいチャレンジはやめられない~

個性に目を向け、才能を伸ばすために

金丸:コーセーで役員になり、一社員だったときに比べて、ものの見方が変わったことはありますか?

小林:改めて思ったのは、第一印象がいかに重要かということです。というのも、役員たちが会議の席で「えっ、あいつが業績トップになったのか?」と驚く姿をたくさん見てきたから。役員からすれば社員の印象って、新入社員の入社面接のときから大きく変わることがないんですね。

金丸:確かに入社後は、直接の接点ってほとんどありませんからね。だから「頼りなさそうだったあいつがねえ」という話になる。

小林:そう。だから「第一印象をすごく大事にしないといけない」と啓蒙することが、私のすべきことだと感じました。早くその考えを世の中に伝えたいと。

金丸:それで独立して、「美・ファイン研究所」やメイクの教育機関を作り、第一線で活躍してこられたんですね。先日、先生が学園長を務めるフロムハンドメイクアップアカデミーの卒業制作発表会に呼んでいただきましたが、小林先生のスピーチにすごく感銘を受けました。「学校の勉強は苦手だったかもしれないけど、この子たちには誰にも負けない美意識があった。そこを伸ばして、こんなに素晴らしい作品を創り上げることができました」と。今の社会は国語・算数・理科・社会で格付けし、その成績で人の優劣が決まります。でも、人にはいろいろな才能があるわけで、その才能を見つけ出して伸ばすことが重要じゃないかと。

小林:卒業制作でグランプリを受賞した女の子は、びっくりするくらい内気な子だったんですよ。中学のときには、学校にもほとんど通えなくて。

金丸:世の中では劣等生の烙印を押されてしまうような子が、ああいう強烈なインパクトの作品を生み出すなんて驚きです。あれだけの創意工夫は、大人には真似できない。よく日本の経済人は、「経営はヒト・モノ・カネだ」と言うけど、そうじゃない。アイデアや工夫がなければ、どれだけ資本があっても先細るだけです。大切なのは、あの子たちのようなクリエーション、イノベーションなんです。

小林:あの子たちは、これまで全くなかったものを生み出しますからね。作品がなかなか出来上がらずに、悩んだり泣いたりもする。でも自分が生み出したものが周りに認められると、ものすごい能力を発揮する。うちに入学した子の作品を見ると、その子の昔しか知らない先生はびっくりしますよ。そのぐらい人の第一印象って、強烈に刺さるんです。だからこそ第一印象は大事にしないといけないし、同時に第一印象で切り捨ててはいけない。ましてや、その人が成長しないって信じ込むなんておかしな話です。10代後半の子どもたちは、ものすごく変化するし成長します。その成長をサポートするために、モチベーションをどうやって作っていくかが大事なんです。人を育てるって、本当に面白いですよ。

金丸:隠れた個性や能力を持っている人たちが、その力をいかんなく発揮できるようになれば、日本は変わりますよね。「一億総活躍」と言われているけど、政府の人たちは結局偏差値だけにこだわっている。偏差値以外のものさしがあることをわかってほしいです。

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